【デイリー No.1,806】最近の指標から見るインド経済(2014年2月)
2014年2月25日
<ポイント>
●外需が堅調なものの、内需が低迷していることから、景気は全体として緩やかな回復にとどまりそうです。
●インド準備銀行(中央銀行、以下RBI)は、物価と景気の両方を注視し、次回4月1日に金融政策を検討する際には、慎重に政策を決定すると思われます。
●日銀の強力な金融緩和姿勢もあり、ルピーは円に対し、底堅く推移すると思われます。
1.景気は緩やかな回復にとどまる見込み
①鉱工業生産
2013年12月の鉱工業生産指数は前年同月比▲0.6%と、同年10月以降3カ月連続でマイナスになりました。内訳を見ると、消費財(全体の約30%)が同▲5.3%、資本財(同約9%)が同▲3.0%とマイナスになり、全体を押し下げました。利上げの影響などから内需は勢いを欠く状況にあり、生産は低迷が続きそうです。
②貿易統計
2014年1月の輸出は同+3.8%と、2013年7月以降7カ月連続でプラスが続いています。過去のインドルピー安や、米国など海外景気が底堅いことから、輸出は増加傾向が続くと思われます。
一方、輸入は金の輸入抑制策の影響などにより、同▲18.0%となりました。輸出の増加と輸入の減少により、貿易赤字は同▲47.8%減少しました。赤字の前年同月比マイナスは、2013年7月以降7カ月連続です。
外需が堅調なものの、内需が低迷していることから、景気は全体として緩やかな回復にとどまりそうです。
2.RBIは、物価と景気の両方を注視
①卸売物価指数、消費者物価指数
2014年1月の卸売物価指数は前年同月比+5.05%と市場予想の同+5.60%を下回り、前月の同+6.16%から低下しました。ただし、その低下の主因は穀物や生鮮食料品などを含む一次産品の上昇率(同+6.84%)が前月(同+10.78%)から大幅に低下したことであり、物価上昇圧力は依然強いと見られます。
また、同月の消費者物価指数は同+8.79%と、前月の同+9.87%から低下したものの高水準にあり、この点もRBIの警戒姿勢の背景となっています。
②金融政策
RBIは1月28日、政策金利(レポ金利)を0.25%引き上げ、8.00%とすることを決定しました。賃金の上昇などにより物価上昇圧力が続くことへの警戒が、利上げ決定の主な背景です。
一方、景気低迷の影響などから物価上昇率の低下傾向が続く場合には、政策金利をこれ以上引き上げないとの考えも示しました。RBIは物価と景気の両方を注視し、次回4月1日に金融政策を検討する際には慎重に政策を決定すると思われます。
3.インドルピーの見通し
対円で底堅く推移する見込み
アルゼンチンペソが大幅に下落した影響などから、ルピーを含む多くの新興国通貨は1月下旬に下落しました。
その後、ルピーはRBIの利上げなどをきっかけに持ち直しつつあります。また、RBIの金融政策改革案や財政赤字を削減する予算案の発表を受け、国債の格下げ懸念が薄らぎつつあることもルピーを下支えしています。日銀の強力な金融緩和姿勢もあり、ルピーは円に対し、底堅く推移しそうです。ただし、米国のQE3縮小の影響や、中国をはじめとする新興国景気の先行き不透明感などもあり、ルピーが下振れする可能性もあり、今後も注意が必要と思われます。