自動車業界の2024年度決算
多額の一時費用が発生、25年度関税の影響が不透明
2025年5月15日
【ポイント1】一時的な費用と販売奨励金の増加で営業減益
■自動車大手の2024年度決算では、各社北米を中心に販売台数は好調でした。エンジンとモーターの両方を駆動力として使うハイブリッド車は需要が大きく伸び、採算性も非常に高いようです。一方、旧型車やバッテリー式電気自動車(BEV)など需要が弱い車種では販売奨励金が大幅に増加し、各社の利益を圧迫しました。①認証問題により生産台数が減少したり、一時的な費用が発生、②四輪製品保証見積変更の影響、など一時的な費用もあり営業利益は減少しました。また、中国で各社販売台数を大きく落とし、持ち分法損益が悪化しています。日産自動車は、工場を再編するために多額の特別損失を計上しました。
■トヨタグループ各社の24年度決算は、世界の自動車販売台数が減少した影響を受けました。グループ各社はトヨタ自動車以外への売上高の構成が大きく、販売台数を大きく減らした欧米やアジアメーカー向けの収益が減少しました。ハイブリッド車向けの利益率の高い部品や材料に強みを持つデンソー、アイシンなど下表5社は前年度に計上した一時費用が縮小したこともあり、営業利益段階で増益を達成しました。減益となった3社は、減損損失など一時費用の発生が、24年度の営業利益減の大きな要因となりました。
【ポイント2】トランプ関税が25年度決算に与える影響額は不透明
■4月から、米国は輸入自動車に対し、25%の追加関税を発動しました。5月からはカナダ・メキシコを除く国から輸入される自動車部品にも25%の追加関税が課されました。日本政府は、交渉により追加関税の早期撤廃を目指していますが、撤廃時期や最終的な関税率を見通すことは困難な状態です。
■カナダ・メキシコから輸入される自動車に米国製の部品が組み込まれている場合、米国製部品相当額に課される関税は控除されます。ただし、米国製部品と認定されるためには、一定割合以上の米国製の部品や材料を使用する必要があり、その証明書も必要のようです。各社その見積もりにも苦労しています。
■下に、トランプ関税の影響を25年度の業績予想にどのように織り込んでいるか、各社のコメントをまとめました。トヨタグループ各社が25年度の業績予想を作成したと見られる4月下旬時点では、追加関税の詳細が判明しておらず、業績予想にトランプ関税の影響を織り込むことは困難だったようです。
■追加関税に対する目先の対応策として、自動車メーカー、部品会社ともに米国内での生産を増やし、追加関税の影響抑制を図っていますが、下の想定より業績への影響は大きくなりそうです。例外的にホンダは還付される公算が高い部品の関税まで織り込んでおり、保守的に見積もっている印象です。
■各社の想定レートより足元のレートは円安に振れており、業績の下支え要因となりそうです。また、関税の詳細が判明しても、購入者、完成車メーカー、部品メーカーでどのように分担するかで各社の業績は大きく変動します。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
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