「暫定予算」を延長へ(米国)【キーワード】
2017年5月2日
<今日のキーワード>
米国では、2016年10月から始まる17年度の本予算が成立せず、16年12月に可決された「暫定予算」によって前年度と同水準の政府支出が認められてきました。「暫定予算」の期限は4月28日まででしたが、議会は期間中に本予算を成立させることができず、1週間の延長を決定しました。これにより、2013年10月のような政府機関の閉鎖という最悪の事態に陥ることは回避されました。
【ポイント1】5月5日までの1週間の「暫定予算」が成立
今後、議会は17年度予算を採択する見込み
■トランプ大統領は2017年4月28日に、5月5日まで1週間の「暫定予算」(Continuing Resolution)に署名し、成立しました。これにより、政府職員に対する人件費などの裁量的経費の支出が可能となり、政権発足から100日のタイミングで連邦政府機関が閉鎖されるという異常事態に陥ることは回避されました。
■今後、議会は12本の歳出法案からなる17年度(2016年10月~17年9月)予算を、オムニバス方式と呼ばれる一括方式で採択する可能性が高いと考えられます。
【ポイント2】国境の壁予算とオバマケア補助金で共和党が譲歩
政府閉鎖を回避
■「暫定予算」成立の障害となっていたのは、共和党が、①国境の壁を建設するための費用の予算化を要求していた、②民主党が義務的予算として恒久計上することを求めていた、低所得者向けのオバマケア補助金(CSR)に反対していたことですが、期限切れを前に共和党が譲歩する形となりました。
■13年10月の予算審議の際に発生した連邦政府機関の閉鎖に関して、「交渉を優位に進めるために共和党が強硬策を選択したことが原因」との批判を受けた反省によるものと見られます。

【今後の展開】トランプ大統領の景気対策は今年10月から始動の見通し
■17年度予算の審議に時間がかかればかかるほど、税制改革(個人・企業の所得税減税)や社会資本(インフラ)整備への投資など、トランプ大統領が期待する政策が多く盛り込まれた18年度予算の成立時期が遅れるリスクが高まります。
■17年度予算の審議如何では、後ずれするリスクも残りますが、現時点では、トランプ大統領による景気対策は今年10月から始動し、その効果は18年1~3月期から顕著に表れてくる可能性が高いと考えられます。