イエレンFRB議長の「議会証言」(米国)【キーワード】
2017年2月16日
<今日のキーワード>
米国の連邦準備制度理事会(FRB)は、年2回、通常は2月と7月に金融政策報告書、通称ハンフリー・ホーキンス報告書を議会に提出し、それと併せて上院の銀行委員会と下院の金融委員会で議長が証言を行います。これによって、最大雇用と物価安定の実現というFRBの二つの責務達成への見通し、方策を確認することができます。今回の「議会証言」は、トランプ大統領の下では初となります。
【ポイント1】次回以降の会合で利上げが必要となる可能性を指摘
金融緩和の長期化は経済を不安定化させるリスクを高める
■2月14日に上院銀行委員会において行った「議会証言」で、イエレンFRB議長は「利上げを待ち過ぎることは賢明ではない」と述べました。金融緩和の長期化は、「結果的に急激な利上げを実施する必要性に迫られる可能性が生じ、金融市場を混乱させ、景気後退を招くリスクが発生する恐れがある」からです。
■このような認識のもと、「雇用とインフレ率が米連邦公開市場委員会(FOMC)の想定に沿った動きとなれば、次回以降の会合で利上げを行うことが適切になるだろう」と語っています。
【ポイント2】トランプ政権の経済政策は不透明
FRBの資産圧縮は当面ないと見られる
■トランプ新大統領の経済政策については、「経済見通しに影響を及ぼす可能性はあるものの、現時点でその効果を測るのは時期尚早」と述べています。
■会見後の質疑応答では、次回利上げの時期について、「3月か、5月か、6月か、どの会合になるかわからない」が、雇用と物価次第で、いずれの会合も利上げ実施の“候補”となることを示唆しました。
■このほか、イエレン議長はFRBの資産規模が今後、相当に縮小する見通しと述べました。ただし、それが米経済に及ぼす影響を考慮すると、金利の正常化が相当に進むまで、資産圧縮の開始は待ちたいとしています。

【今後の展開】物価の落ち着き等から、利上げは緩慢なペースとなる見込み
今回のイエレン議長の「議会証言」は、米経済に対する見方が比較的楽観的だったことを受け、ニューヨーク市場の株価、主要国通貨に対する米ドル相場が上昇、債券の価格は下落(利回りは上昇)しました。
米国の景気は、個人消費を支えに順調な拡大基調を辿っていますが、物価や賃金の上昇率は依然として低い水準に止まっています。このため、FRBによる利上げの速度は緩慢なものとなる見通しです。