「ジャクソンホール」会議(米国) 【キーワード】
2016年8月30日
<今日のキーワード>
米国地区連銀のひとつカンザスシティ地区連銀は毎年8月下旬に、ワイオミング州「ジャクソンホール」において、経済政策に関する国際シンポジウムを開催しています。世界各国から中央銀行総裁、政策担当者、学者などが参集し、世界経済や金融政策を巡る議論を交わすため、金融市場での注目度には高いものがあります。今年は「将来のための弾力性の高い金融政策の枠組みの設計」をテーマに、25日~27日に開かれました。
【ポイント1】米国の「利上げの条件は整ってきた」
イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長が利上げに前向きな発言
■2年振りに「ジャクソンホール」会議に出席したイエレンFRB議長は、26日に「連邦準備制度の金融政策ツールキット(工具セット)」という主題で講演を行いました。
■そのなかで注目を集めたのは、「労働市場の堅調な展開や経済、物価に関する我々の見通しに照らせば、私はこの数カ月間で利上げの条件は整ってきたと信じている」との発言でした。
【ポイント2】9月利上げの可能性が高まる
早期利上げに肯定的な委員が増加
■7月の連邦公開市場委員会(FOMC)議事録までの慎重な姿勢に比べ、利上げに対して肯定的な発言といえます。
■しかも、その直後にフィッシャーFRB副議長が、9月利上げの可能性を問われ、「イエレン議長の講演が、その問いに対する答えです」と返答したことから、早期利上げ観測が一段と強まりました。
■そのほか、カンザスシティ連銀のジョージ総裁、アトランタ連銀のロックハート総裁など、近い将来の利上げを示唆する地区連銀総裁も増えています。
■以上から判断すると、雇用統計の内容にもよりますが、9月20日、21日開催予定の次回FOMCで利上げが実施される可能性は高まったと考えられます。

【今後の展開】物価が安定しているため、今後の利上げペースは緩慢と見られます
■イエレンFRB議長の発言を受けた26日の米国金融・資本市場では、債券利回りが上昇する一方、ダウ平均株価は下落しました。他方、為替市場では米ドルが、円やユーロなど主要通貨に対して高くなりました。
■米国の景気・雇用情勢から判断する限り、利上げが継続される可能性はあります。ただし、物価上昇率は低位で安定しており、利上げのペースは緩慢なものにとどまる見込みです。従って、株、債券とも今後は底堅さを取り戻すと予想されます。