安定成長を示唆する「ベージュブック」(米国) 【キーワード】
2016年7月15日
<今日のキーワード>
「ベージュブック」は、米国に12ある地区連邦準備銀行(地区連銀)が、管轄地域の経済状況をまとめた「地区連銀経済報告」のことです。表紙のベージュ色が名前の由来であり、経済情勢についての総合判断、主要産業の動向や雇用・物価動向などがまとめられています。「ベージュブック」は、年に8回開催される連邦公開市場委員会(FOMC)の2週間前の水曜日に公表され、金融政策の判断材料として用いられます。
【ポイント1】経済活動への評価は、前回と同様、「緩やかなペースで拡大」
将来の見通しも概ね良好
■7月13日に公表された最新の「ベージュブック」は、「ほとんどの地区で経済活動は穏やかなペースでの拡大を維持している」と総括しました。6月1日に発表された前回報告とほぼ同じ評価です。先行きの見通しについても、概ね良好との評価でした。
【ポイント2】労働市場は引き続き安定、個人消費は堅調に推移
物価上昇圧力は軽微
■各論を見ると、まず労働市場は、雇用、賃金ともに緩やかな増勢を維持しました。特に、ITやバイオテクノロジーなど、高度な知識・技術を有する人材の確保は、依然として困難な状況が続いているようです。
■物価上昇圧力は、引き続き軽微でした。原材料費や住宅価格に上昇は見られるものの、販売価格にはほとんど変化がありませんでした。
■個人消費は、フィラデルフィア、リッチモンドなど一部の地区で伸び悩んだものの、概ね良好との評価でした。将来の見通しも、大半の地区で楽観的です。
■建設・不動産は、商業用、住宅とも好調を持続、銀行の貸出需要も拡大が報告されました。他方、製造業は、地域や業種によって「まちまち」との評価でした。

【今後の展開】物価安定の下での緩やかな景気拡大を維持
■7月利上げの可能性は低い
今回の「ベージュブック」は、米国経済の緩やかな成長と物価の安定を示唆する内容でした。7月26日、27日に開催される次回FOMCで、利上げが実施される可能性は低いと考えられます。
■株価の上昇を支援
米国株式市場では、今年7月12日にニューヨーク・ダウが史上最高値を更新しました。今後も、物価安定の下での緩やかな景気拡大、企業収益の改善などを支えに、株価は堅調な推移が見込まれます。