「景気拡大は長期化」する見込み(米国) 【キーワード】
2016年6月21日
<今日のキーワード>
設備投資に在庫投資を加えた固定投資と、税引後利益に減価償却費などを加えたキャッシュフローの差をファイナンシング・ギャップ(資金差額)といいます。投資を実施するのに必要な資金のうち、どの程度を自己資金で賄ったかを測る指標です。ファイナンシング・ギャップのプラス幅が拡大するほど、企業が設備投資に対して積極的、逆の場合は消極的になっていることを示しています。
【ポイント1】ファイナンシング・ギャップは5四半期連続のプラス
プラスの幅は縮小傾向
■米連邦準備制度理事会(FRB)の財務勘定統計によれば、2016年1-3月期の米非金融企業のファイナンシング・ギャップは、年間ベースに換算すると832億ドル、対GDP比で+0.46%でした。5四半期連続のプラスですが、15年4-6月期の+1.24%をピークに低下傾向にあります。
【ポイント2】設備投資に慎重な姿勢
キャッシュフローが伸び悩み
■ファイナンシング・ギャップのプラス幅が縮小している原因は、企業が設備投資をキャッシュフローに近い水準に抑えようとしていることにあります(キャッシュフローとは、税引後利益と減価償却費を合計し、そこから配当金や役員賞与を差し引いたものです。減価償却とは、長期間にわたって使用される資産の購入のために支払った費用を、その資産が使用される期間にわたって配分することをいいます。)。
■実際、設備投資に在庫投資を加えた固定投資の対GDP比を見ると、15年4-6月期の10.48%を当面のピークとして2016年1-3月期の9.41%まで低下。キャッシュフローとのかい離が縮小しました。

【今後の展開】今回の景気拡大局面は息の長いものになる見込み
■企業は身の丈に合った投資を実行
このことは、米国の企業が、身の丈に合った投資を行っていること、つまり無理をしないように努めていることを示すものです。戦後最悪といわれた前回の景気後退を経験した、その学習効果と見られます。
■設備投資の拡大余地は大きい
過剰な投資を行っていないわけですから、過剰な設備や在庫が発生することはなさそうです。裏返せば、企業に対する調整圧力が発生する可能性は小さく、今回の「景気拡大は長期化」すると考えられます。