財務勘定から見る「家計の財務」(米国)【キーワード】
2016年4月5日
<今日のキーワード>
米国の家計が保有する資産、負債の状況は、米連邦準備制度理事会(FRB)が四半期ごとに公表する財務勘定統計で捉えることができます。財務勘定とは、金融機関、法人、家計といった各部門の金融資産・負債の推移などを、預金や貸出といった金融商品ごとに記録したものです。日本では、日銀が資金循環勘定統計として公表しています。米国では、3月10日に15年10-12月期の統計が公表されました。
【ポイント1】家計の正味資産は過去最高を更新
株価や住宅価格の値上りで総資産が拡大
■総資産から総負債を差し引いた家計の正味資産は、15年10-12月期末に86兆7,960億ドル(約9,982兆円)となり、2四半期ぶりに過去最高を更新しました。総資産が101兆3,058億ドル、前期比+1.8%となる一方、総負債は14兆5,098億ドル、同+0.9%の伸びにとどまったためです。正味資産を可処分所得(個人所得から、支払い義務のある税金や社会保険料などを差し引いた残りの手取り収入)に対する比率で見ると、前期の6.31倍から6.39倍に上昇しました。
【ポイント2】資産効果は見られない
貯蓄率は高い水準を維持
■正味資産の対可処分所得比率と貯蓄率の間には、負の相関関係が認められます。株価や住宅価格が値上がりし、家計の正味資産が増えると、消費が拡大し、貯蓄率は低下するという関係です。資産効果といわれるものです。
■ところが、住宅バブルが崩壊した2007年以降に限れば、この関係は崩れてしまっています。2015年10-12月期について見ると、家計正味資産の対可処分所得比は先ほど述べた通り6.39倍でした。これに対応する貯蓄率は3.9%と推計されますが、実際の貯蓄率は5.1%でした。資産効果は、ほとんど表れていないといえます。

【今後の展開】過剰消費が発生する可能性は低く、景気拡大は長期化しよう
■所得に見合った消費を行う家計
このことは、家計が所得の伸びに見合った消費を行っていることを示しています。資産効果が消費を大きく押し上げた住宅バブル期とは、決定的に異なる点です。
■息の長い景気拡大となる可能性が高い
裏返せば、過剰消費、過剰債務が発生する公算は小さいということです。このため、米国経済の拡大局面は長期化する可能性が高いと考えられます。