イエレン、「議会証言」で利上げ地ならし(米国)【キーワード】
2015年2月27日
<今日のキーワード>
米国の連邦準備制度理事会(FRB)議長は、法律に基づき、金融政策などを議会に説明する「議会証言」を行うことになっています。毎年2月と7月の2回、上院の銀行委員会と下院の金融委員会において行われます。毎年決められた時期の「証言」として、講演などでの発言に比べて注目度が高く、最大雇用と物価安定というFRBの「二つの使命」達成への方策が確認できます。
【ポイント1】6月の利上げはやや後退
「少なくとも今後2回の会合での利上げは無い」
■2月24日と25日、イエレンFRB議長は上院、下院の委員会において「議会証言」を行いました。市場では、将来の政策変更を示唆する「フォワード・ガイダンス」の解釈に注目が集まっていました。現行の「フォワード・ガイダンス」は、利上げを開始することに「忍耐強くなれる」です。2004年の利上げの前にも同じ文言が使用されており、これが「緩和解除のペースは慎重に」と変更された後に、利上げが開始された経緯があります。
■「忍耐強く」について、イエレン議長は「少なくとも今後2回の会合での利上げを意味しない」と説明しました。また、「フォワード・ガイダンス」変更後も、その後2回の会合で利上げするとは限らないとの見方を示しました。これらに加え、インフレが当面下振れるとの見通しもあり、6月のFOMCでの利上げはやや後退した、との見方が強まりました。
【ポイント2】雇用にまだ改善の余地
インフレは目標の2%に及ばず
■雇用環境については、着実に改善しているとしながらも、「労働参加率は低く、賃金の伸びは緩慢」とし、改善の余地があるとしました。
■足元で目標の2%を大きく下回るインフレ(2014年12月の個人消費支出価格コア指数は前年同月比+0.7%)については、短期的にさらに下振れるものの、「雇用が改善し、原油安の影響が薄れるにつれ中期的に目標に近づく」と見通しました。

【今後の展開】今年後半の利上げへ、まずは「忍耐強く」の変更に注目
■利上げを「会合ごと」に検討
イエレン議長は、利上げの検討を「会合ごと」に行うとし、市場の見方が一方向に振れないよう配慮するとともに、情勢次第でいつでも利上げが可能となる自由度も確保したと言えそうです。
■雇用と物価の改善を見極め
イエレン議長は、「インフレが2%の目標に向け中期的に近づくことを合理的に確信した時」に利上げを行うと述べています。今後も、雇用と物価の情勢を慎重に検討していくものと見られます。まずは、「忍耐強く」がいつ変更されるかに注目です。