米国のシャドーバンキング(米国)【キーワード】
2014年8月21日
<今日のキーワード>
米国では10月にQE3縮小が終了する見通しです。QE3の縮小を判断した背景には、景気判断に加え、金融システムの安定化を確保するという観点があります。金融システムの安定化について、金融規制強化で対応する方向ですが、もともとはリーマンショックが金融市場に大きな影響を与えた要因の1つとして「シャドーバンキング」の存在が大きかったことが指摘されていました。
【ポイント1】投資銀行やヘッジ・ファンドが利ザヤ稼ぎ
シャドーバンキングは伝統的な銀行業務の外で行われる金融活動
■シャドーバンキングとは、借り手と貸し手の資金の流れを仲介するという銀行の役割を、銀行以外の担い手(シャドーバンク)が行う、金融活動全般を指します。具体的には、預金保険の対象とならない短期の市場性資金を調達し、長期の資産に投資して利ザヤを確保するといった金融活動等が挙げられます。短期の資金調達手段はコマーシャルペーパー(CP)やマネー・マーケット・ファンド(MMF)等で、投資する長期の資産は資産担保証券(ABS)や債務担保証券(CDO)等です。シャドーバンクは、投資銀行やヘッジ・ファンドなどで、金融当局の規制や監視が難しいことが問題とされています。
【ポイント2】QE3開始で規模が若干拡大
金融システム安定化に向けQE3縮小へ
■リーマンショック後、シャドーバンキングの担い手は資金難となり、金融不安に拍車をかけつつ、規模が大きく縮小し、QE1、QE2実施時も縮小傾向を続けました。
■しかし、QE3開始後、シャドーバンキングの規模が増加し始めました。懸念するような規模ではないにせよ、量的緩和を終了することで将来の金融システム不安の芽を摘む、ということもQE3縮小を判断した背景と思われます。

【今後の展開】拡大余地に対し規制強化で対応
■低金利持続で拡大余地
米国のシャドーバンキングの規模は、QE3開始後の2013年3月末に13.6兆米ドルと底を打った後、QE3実施中、緩やかに拡大しました。QE3縮小が始まった後の2014年3月末現在、13.6兆米ドルと再び縮小しました。しかし、依然として低金利が続いていることや、ハイリスク融資をオフバランス化する動きも出ているなど、シャドーバンキングが拡大する余地が指摘されています。
■金融システム安定化のための規制強化
FRBは、金融システムの安定化を重視しつつも、今は過度に注視するまでの環境にはないとの判断です。ただ、MMFが増加傾向にあり、また、非常にスプレッドが縮小している社債市場や顕著な拡大傾向が続いているレバレッジドローンに懸念を表明しています。金融政策での対応にも限界があることから、今後も、金融システム安定化のための規制強化が実施される見通しです。