【キーワード No.1,373】イエレン議長「議会証言」で改めて慎重姿勢示す(米国)
2014年7月17日
1.FRB議長の「議会証言」とは
米国の連邦準備制度理事会(以下、FRB)の議長は、法律に基づき、毎年2月と7月の年2回、上院の銀行住宅都市委員会と下院の金融委員会において、金融政策の報告などを行う「議会証言」が義務付けられています。この「議会証言」は毎年決まった時期に行われるため、講演などでの発言に比べて注目度が高くなっています。
2.最近の動向
7月15日と16日、FRBのイエレン議長は上院・下院の委員会において「議会証言」を行いました。現在進められている量的金融緩和策(QE)の縮小について、今年10月のFOMCにおいて終了させる見通しを示しました。また現在の低金利政策(事実上のゼロ金利政策)については、QE終了後も相当な期間維持することが適切との見方を示しました。これらはこれまで声明文等で示されてきたことと大きな変更はありません。

3.今後の展開
FRBの任務は、雇用の最大化と物価の安定、といういわゆる「デュアルマンデート(2つの使命)」と呼ばれるものです。このため、今後の利上げのタイミングについては、雇用情勢と物価動向が注目されています。雇用情勢については、失業率は6.1%まで低下しています。また物価については、FRBが長期目標とする個人消費支出物価指数は5月に前年同月比+1.8%まで上昇しました。しかし、失業率は過去の通常のレベルを上回っていることや賃金の伸びが遅いこと、物価は未だFRBの長期目標の2%を下回っていることなどを指摘し、早期の利上げに対しては否定的で慎重な姿勢を改めて示唆しました。
今年3月、イエレン議長がQE終了後の利上げのタイミングについて、6カ月程度と言及したことに対し、市場では拙速に金融引き締めに転じることによる景気の腰折れを懸念する声も聞かれました。このため、イエレン議長も発言には慎重になっていると思われます。雇用や物価の回復に連れて、利上げなど金融政策の方針についてどのように見解が変化するのか、今後もイエレン議長の発言に注目です。