【キーワード No.1,343】FRBが重要視する「PCE価格指数」(米国)
2014年6月5日
1.「PCE価格指数」とは?
GDPを構成する要素の一つである「個人消費支出(Personal Consumption Expenditures、以下PCE)」の価格の変化部分を指数化したものです。個人の消費にかかる物価上昇率を示す指標には消費者物価指数(Consumer Price Index、以下CPI)がありますが、PCEはCPIが含まない間接的支出(健康保険からの支払いなど)を含み、調査対象の算出割合が異なります。FRBは物価目標をCPIではなく「PCE価格指数」としています。
2.最近の動向
5月30日に米国商務省が発表した4月の「PCE価格指数」は前年同月比+1.6%と、前月の同+1.1%から加速しました。これは2012年11月以来の水準です。「PCE価格指数」は2011年9月の同+2.9%を直近のピークに鈍化し、しばらく+1%前後にとどまっていましたが、今年2月の同+0.9%を底として、4月は大幅に上昇しました。
内訳をみると、昨年4月、5月に上昇率が低下しており、今年はその反動で上昇幅が大きくなっています。特にエネルギー価格や衣料品にこの動きが見られました。また、年初来、肉類や乳製品の価格が上昇しており、年末年始の大規模な寒波の余波もうかがわれます。

3.今後の展開
FRBの任務は、雇用の最大化と物価の安定、いわゆる「デュアルマンデート(2つの使命)」です。米国の雇用は、完全失業率が2009年10月の10.0%から2014年4月には6.3%まで低下し、FRBが当面の目標としていた6.5%を下回りました。これに対して、FRBのイエレン議長は安定した賃金上昇や長期失業者数の減少などといった「質の改善」が必要だと指摘しています。一方物価については、「PCE価格指数」の前年比+2%を長期の目標としています。2014年4月の「PCE価格指数」の加速は前年の反動や寒波の余波といった特殊要因が寄与したと考えられ、今後基調的に前年比+2%程度に向かうかが、QE政策終了後の利上げのタイミングを計るうえで重要となります。今月17日から18日に開催されるFOMC後にはイエレンFRB議長の講演もあり、そこで足元の雇用と物価の改善についてどのように語られるのか、注目です。