【キーワード No.1,283】ベージュブックが伝える寒波の影響と今後の景気(米国)
2014年3月7日
1.「ベージュブック」とは?
米国の12の連邦準備銀行(地区連銀)が、管轄地区の動向を報告する「地区連銀経済報告書」のことです。報告書の表紙がベージュ色のため、『ベージュブック(Beige Book)』と呼ばれます。報告はFOMCが開催される2週間前の水曜日に公表され、各地区の経済活動のほか、主要産業の動向や物価動向などがまとめられています。今回の報告は2月24日までの情報を基に、約1カ月半の動向をまとめたものです。
2.最近の動向
5日に公表されたベージュブックでは、12地区中8地区が景気は「緩やかに拡大」したと報告しました。
この冬、北東部、中西部は異例の厳しい寒波を受けており、消費が大半の地区で弱含んだほか、採用活動も悪天候で鈍化したと指摘されました。北東部の経済の中核となるNY地区とフィラデルフィア地区は、景気がやや悪化と報告しました。
しかし、景気見通しはほぼ変わらず、大半の地区で楽観的なままでした。景気悪化を報告した両地区も、寒波が主な要因として、懸念は限定的です。市場では、次回FOMCへの影響も限定的と受け止められました。
3.今後の展開
多くの市場参加者の見通しが弱含んでいない理由の一つは、寒波で棚上げされた需要(ペントアップ・ディマンド)が、春以降に実現すると見込まれることです。ベージュブックが指摘した例としては、住宅や自動車販売の遅れ、生産計画と物流の乱れなどが挙げられます。また、多くの地区はこのところの技術者の不足感を指摘しており、例に挙げられたヘルスケアやITなどの分野では、雇用増も見込めそうです。
また、ベージュブックは企業活動に関して、ソフトウェアなどの需要が従来の想定以上に強いこと、商業用不動産の見通しが改善してきたことなど、寒波に関わらず成長を続ける部門にも言及しました。
FRBは昨年12月、2014年10-12月期の実質GDP成長率が、前年同期比+2.8%~+3.2%になると予想しました。この上限に近ければ、3%台前半と見られる潜在成長率とほぼ変わりない水準です。3月18日~19日のFOMCでは、FRBが新たな予測を発表する予定ですが、寒波を踏まえたうえで見通しの変化があるか否か、注目されるところです。