「財政再建」は正念場(ブラジル)【キーワード】
2015年9月10日
<今日のキーワード>
ブラジルの財政収支(利払いを除くプライマリー収支、以下同様)は、2014年にGDP比▲0.6%と現行統計開始(2001年)以来初の赤字になりました。2015年の財政収支の目標は、景気見通しの下方修正などにより、7月下旬に同+1.1%から+0.15%の黒字に引き下げられました。景気低迷と政治的な不透明感が長引くなか、市場では「財政再建」の行方に注目が集まっています。
【ポイント1】2016年の財政収支目標は、予算段階で初の赤字に
野党からは財政緊縮努力が不十分との批判、予算案拒否の動きも
■政府が8月31日に議会に提出した予算案によると、2016年の財政収支目標はGDP比▲0.5%の赤字とされました。実質GDP成長率が前年比+0.2%とほぼゼロ成長となる前提などから、初めて計画段階の財政収支目標が赤字になりました。
■野党からは、財政緊縮努力が不十分であり、政府提出の予算案を拒否すべきとの意見が出ています。政府が財政緊縮に十分踏み込めなかった背景として、一段の歳出削減を目指すレビ財務相と、増税中心の財政再建を目指すバルボーザ企画相との意見の相違を指摘する見方もあります。
【ポイント2】S&Pは非投資適格級に格下げ
見通しも「弱含み」
■大手格付け会社S&Pは9日、ブラジル国債の格付けを1段階引き下げ、BB+にすると発表しました。同社の格付けでは、投資適格級から外れることになります。同社は7月に、財政緊縮の進展に、政治的、経済的リスクが高まったとして、格付けの見通しを「弱含み」に引き下げていました。その後、状況に改善が見られず、何らかの追加措置が無ければ予算案の達成も困難との判断があったと見られます。

【今後の展開】「財政再建」路線が確認されれば、国債利回りの再評価も
■ルセフ大統領は「財政再建」の方針を継続
報道では、レビ財務相の辞任を求める与党内の動きが伝えられています。しかし、ルセフ大統領は、8月下旬に閣僚ポストの大幅削減と省庁の規模縮小で歳出を抑制する考えを示すなど、レビ財務相と同じ「財政再建」の方針を続けています。
■国債利回りの高さは再評価の可能性も
ブラジル国債の利回りは、足元の格下げもあり当面不安定な動きとなりそうですが、レビ財務相の去就を巡る不透明感が払拭され、「財政再建」路線の進展に確信度が増せば、利回りの高さが投資魅力の一つとして再評価される可能性がありそうです。