メキシコ「政府の原油安対策」 (メキシコ)【キーワード】
2015年3月5日
<今日のキーワード>
メキシコは豊富な石油資源を有しており、国営石油公社ペメックスが納付する税金などは、政府の歳入全体の約3分の1を占めています。ペニャ・二エト大統領は、エネルギー産業の活性化に向け石油開発投資に外資を含む民間資本の参入を認めるなど改革を進めていますが、昨年来の大幅な原油安により、歳入の減少や改革の遅れが懸念されています。
【ポイント1】石油安定化基金が歳入不足を一部カバー
歳出削減も進める
■政府は石油安定化基金を設けており、石油関連の歳入が予算を上回った場合に積み立てをし、原油安などで不足が生じる場合には歳入に補てんを行います。足元の原油価格は2015年の予算で想定した1バレル79米ドルを大幅に下回っていますが、政府は基金からの補てんと金融取引を活用した石油輸出価格の安定化策により、概ね予算程度の石油関連収入を確保したと発表しています。
■政府は1月30日、内外の経済情勢が不透明になっていることに対する予防的な措置として、2015年の歳出を予算から1,243億ペソ(歳出の約2.6%)を削減すると発表しました。歳出削減案には、高速鉄道の建設見送りや石油関連の支出抑制などが盛り込まれました。
【ポイント2】エネルギー改革は進行中
深海掘削事業などで遅れも
■政府は1月に油田開発への民間企業の参入ルールを発表するなど、エネルギー改革は前進しています。今年中に様々な鉱区への入札を実施し、事業会社を決定していく予定です。
■原油安を受けて、民間企業が深海部での採掘などコストの高い事業への参入に消極的になるとの見方があります。政府が入札時期が遅れる可能性を示唆していることもあり、今後の入札実施状況などに注意する必要があります。
【今後の展開】エネルギー改革の進捗による政治の安定や景気拡大に期待
■改革路線継続は政治の安定にも重要
ペニャ・ニエト大統領は、2012年12月の就任後、教育、金融、財政、通信など、幅広い分野で改革を進めてきましたが、治安や汚職の改善が進まないことにより国民からの支持が低下しつつあります。エネルギー改革は現政権の目玉ともいえる政策であり、政治安定の面でも進捗が注目されます。
■エネルギー改革による景気拡大に期待
メキシコの景気は、米国の堅調な需要や史上最低水準の政策金利を背景に持ち直しています。ただし、政府はインフラ投資の削減を決定しており、景気回復は緩やかにとどまりそうです。エネルギー改革は、経済成長率の底上げにもつながることから、その進捗は景気面からも期待されます。