【キーワード No.1,352】ブラジルの大統領選挙と市場への影響(新興国)
2014年6月18日
1.ブラジルの大統領選挙とは?
ブラジルでは、2011年1月に就任したジルマ・ルセフ大統領の任期満了(4年間、今年12月末)に伴う大統領選挙が10月に予定されています。同国の大統領選挙は、国民による直接投票で実施され、第1回目の投票で過半数の得票者がいない場合には、上位2名で決選投票が行われます。現職のルセフ氏が2期目を目指して与党労働者党(PT)から出馬する意向のほか、野党からは、ブラジル社会民主党(PSDB)のネーベス氏やブラジル社会党(PSB)のカンポス氏をはじめ、数人が立候補すると見込まれています。
2.最近の動向
6月4日から7日に実施されたIBOPE社の世論調査によると、ルセフ氏の支持率は40%を下回り、有力な対抗馬と見られるネーベス氏やカンポス氏との格差が縮小しました。
野党両氏はいずれも、インフレの抑制や投資の促進に積極的に取り組む姿勢を掲げています。足元で景気が低迷している一方、高インフレが続いていることなどから、ルセフ政権の経済政策への批判が対抗馬の支持率上昇の一因になっていると思われます。難しい経済情勢のなか、ルセフ大統領は再選に向けて苦戦が予想されます。

3.今後の展開
足元では、こうした支持率格差縮小の報道を受けてブラジルレアルや株式市場が上昇する局面が見られます。政権交代が実現すれば、遅れている大規模なインフラ事業が前に進むとの期待が背景にあります。加えて、景気押し上げやインフレ抑制などの政策も大胆に進められるとの期待もあると思われます。
一方、ルセフ大統領は歳出を絞りながらも公共投資を拡大しており、この政策効果などから今後景気は持ち直すと見込まれています。景気回復により経済政策への批判が和らぐ場合には、ルセフ大統領の再選見込み、レアル、株式市場がいずれも上昇する可能性があります。
ブラジルでは、サッカーワールドカップが7月中旬までの予定で開催されています。経済への直接的な影響が見極めにくいほか、ブラジルチームの勝敗も国民や市場の心理に大きく影響するとの指摘も見られます。今後の経済情勢は、大統領選挙の行方を左右する可能性もあり、市場動向を見極める上でもカギになると見られます。