変貌する日本の「株主総会」(日本) 【キーワード】
2016年6月24日
<今日のキーワード>
3月期決算企業の「株主総会」開催が本格化しています。かつて「株主総会」といえば、企業側が議事進行を優先したいがために、開催日が集中する傾向がありました。このため、複数の企業の株式を所有する投資家は一つの企業の総会にしか参加できませんでした。「株主総会」自体も企業間の持ち合いなどを背景に、形骸化したセレモニーの感もありました。ただし近年、「株主総会」は大きく変貌を遂げてきています。
【ポイント1】「株主総会」の開催日、分散化が顕著に進行
今年は9ポイント低下の32%が同一開催日
■「株主総会」の開催日の分散が進んでいます。総会の集中度が最も高かった1995年には、実に96%の企業が同じ日に「株主総会」を開催していました。その後年々低下傾向をたどり、今年の3月期決算上場企業の「株主総会」集中日は6月29日で、東証上場企業2,293社のうち約32%が開催を予定しています。これは昨年6月26日の集中度が約41%なので、9ポイントの大幅低下となる見通しです。
【ポイント2】「コーポレートガバナンス・コード」の導入が背景
株主との建設的な対話が重要
■集中日の分散には、東京証券取引所が2015年6月に導入した、「コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)」が背景にあると思われます。
■このコードは、日本企業は欧米に比べ株主を重視していない、との批判を受けて、企業が意思決定を行うための規範を定めたものです。コードの中には、「上場会社は、株主との建設的な対話の充実や、そのための正確な情報提供等の観点を考慮し、株主総会開催日をはじめとする株主総会関連の日程の適切な設定を行うべきである。」、との記述がなされました。「コーポレートガバナンス・コード」は、安倍内閣の「日本再興戦略」の重点項目の一つにもなっています。

【今後の展開】機関投資家は「物言う株主」へ
一方で、株主として生命保険会社や運用機関などの機関投資家の多くは、「スチュワードシップ・コード(責任ある機関投資家の諸原則)」を表明し始めています。このコードでは、機関投資家は企業との対話を通じて、企業価値の向上や持続的成長を促すことが求められています。
かつては、日本の機関投資家は「物言わぬ株主」とも言われ、それが日本企業の資本効率の低さの一因とも言われてきました。企業の変化を促すためにも、「株主総会」での議決権の行使が、極めて重要な意味を持ってきます。機関投資家は、「物言う株主」への変化が求められています。