「日銀短観」、景況感改善が足踏み(日本)【キーワード】
2015年4月2日
<今日のキーワード>
「日銀短観」は、日銀が金融政策運営の参考にするため、3カ月ごとに約1万社の企業に行う「全国企業短期経済観測調査」のことです。市場では大企業・製造業の現状の景況感(業況判断DI)と3カ月先の景況感(先行きDI)が注目されています。また景況感のほか、企業の売上、収益、設備投資計画や雇用などの状況判断が発表されます。今回の調査期間は2月25日~3月31日でした。
【ポイント1】輸出業種の改善が足踏み
大企業・小売の「先行きDI」は大きく上昇
■4月1日、3月調査分の「日銀短観」が発表されました。「業況判断DI」(最近)は、大企業・製造業が+12と前期比横ばいとなり、大企業・非製造業が+19と前期比+2ポイント上昇しました。製造業では自動車や電機などの輸出関連業種が横ばいでした。非製造業では不動産、小売、対個人サービスなどが改善しており、消費税増税の影響が薄れてきたと見られます。
■「先行きDI」(先行き)は大企業・製造業が+10(同▲2ポイント)、大企業・非製造業が+17(同▲2ポイント)とともに低下しましたが、依然「良い」の判断が「悪い」を上回っています。大企業・非製造業では小売が+13(同+8ポイント)と大きく上昇しました。賃上げの動きやインバウンド消費の増加などが背景にあると見られます。
【ポイント2】経常利益に上振れ余地
設備投資も今後上方修正
■2015年度の経常利益は、大企業・製造業が前年度比+1.3%、全規模・全産業では同+0.6%と小幅な増益が見込まれています。大企業・製造業の事業計画の前提となる米ドル円レートは111.81円と現状より円高が想定されていることなどから、大企業・製造業の利益計画は上振れの余地があると見られます。
■また、2015年度の設備投資額(ソフトウェアを含み、土地投資額を除く)は、全規模・全産業では前年度比▲2.4%と減少の見込みです。ただし、設備投資額は3月調査時点では控え目に出される傾向があり、こちらも上振れの余地があると見られます。

【今後の展開】海外景気などの不透明感解消につれ景況感改善へ
■人手不足感が強まる
雇用人員判断は、「最近」、「先行き」ともに全規模・全産業で人手不足感が強まりました、特に非製造業が強くなっています。人手不足に加え、企業収益の拡大が続いていることなどから今年は昨年以上の賃上げが期待されています。
■海外景気の不透明感を反映
米国、中国経済の鈍化懸念、円安によるコスト増などの不透明な要素もあり、企業の景況感の改善が足踏みしました。海外景気の見通しが落ち着くにつれ、内需の改善期待にも支えられ、景況感は緩やかに改善すると見込まれます。