「家計と企業の貯蓄動向」(日本)【キーワード】
2015年1月23日
<今日のキーワード>
国全体の家計(個人)と企業の貯蓄は、GDPなどを算出する国民経済計算で把握できます。貯蓄は、一定期間の所得から消費などに回した分を差し引いた額です。貯蓄がマイナスの場合は、所得以上に消費し、貯蓄を取り崩したことを意味します。2013年度の家計の貯蓄は▲3.7兆円と、初めてマイナスに転じました。一方、企業の貯蓄は32.6兆円と過去最高を更新しました。
【ポイント1】マイナスとなった家計貯蓄率
増税前の駆け込み消費も一因
■2013年度の家計の所得は286兆円と、前年度比+0.5%に留まり、消費は289兆円と同+2.8%の増加となりました。その結果、家計貯蓄(所得マイナス消費)は▲3.7兆円、家計貯蓄率(家計貯蓄÷所得)は▲1.3%となりました(内閣府「2013年度国民経済計算確報」より)。
■家計貯蓄率は、1975年度の23.1%をピークに総じて低下傾向で推移してきました。家計貯蓄率がマイナスとなるのは1955年度以降で初めてのことです。低下傾向となっている背景には、高齢者を中心に貯蓄を取り崩して消費に回していること等が指摘されます。2013年度のマイナスへの転換は増税前の駆け込み消費が影響したと思われます。
【ポイント2】貯蓄が増加する「企業」
過去最高を更新
■家計の所得がなかなか伸びず、家計貯蓄がマイナスとなる一方、企業(非金融法人)の貯蓄は増加傾向が続いています。2013年度の企業の貯蓄は32.6兆円と過去最高を更新しました。

【今後の展開】企業貯蓄の活用が鍵
■個人金融資産残高が減少する可能性も
国民経済計算上、家計と企業が政府の巨額の債務を支える構図です。家計と企業を合わせた民間貯蓄は安定して推移しており、国債の消化を支えています。すぐにこの構図が変化するわけではありませんが、家計貯蓄率のマイナスが続けば、いずれ、個人金融資産の残高が減少に転じ、政府債務を支える力が弱まる可能性があります。
■企業の貯蓄をいかに活用するか
足元で政府債務を支える中心は貯蓄超過の企業です。その一方で、企業のこうした過剰な貯蓄に対して、生産的な投資、株主への還元、賃金の引き上げ等に活用することで経済の活性化が図れるとの声も高まっています。今後は、企業がその貯蓄をどのように活用していくのかが、経済、財政を考える上での重要な鍵となりそうです。