実質賃金(日本)【キーワード】
2014年11月21日
<今日のキーワード>
実質賃金は、実際に支払われている賃金(名目賃金)からインフレの影響を除いたもので、実質的にどれだけのモノを購入できるかを見る指標です。例えば、賃金が10%増えても、インフレが10%進めば、実質賃金は増えていないと考えます。実際には、厚生労働省が発表する「実質賃金指数」(現金給与総額を基として、名目賃金指数を消費者物価指数で除して算出)が参考になります。
【ポイント1】実質賃金指数は2013年7月以降、前年同月比でマイナス
消費税増税後は2014年7月を除き3%超のマイナス
■11月18日に厚生労働省が発表した9月の毎月勤労統計調査(確報)によると、実質賃金指数は前年同月比▲3.0%と、2013年7月以降のマイナスが続きました。2013年7月から2014年3月までは概ね1%台のマイナスとなっていましたが、消費税率が8%へ引き上げられた2014年4月以降は、7月を除いて前年比▲3%を超えるマイナスが続いています。
【ポイント2】給与増加ペースを物価上昇が上回る
現金給与総額は2014年3月以降プラス
■現金給与総額を見ると、2014年3月以降プラスに転じ、9月は前年同月比+0.7%となりました。特に多くの企業で夏季のボーナス支給時期となった7月は同+2.4%でした。一方、消費者物価指数は2013年6月からプラスに転じています。消費税増税が実施された2014年4月以降は前年同月比+3%以上の上昇となっています。
■実質賃金指数のマイナスでの推移は、給与の増加は続いているものの、物価上昇がそれを上回り、実質的な賃金が目減りしていることを表しています。
【今後の展開】消費税増税延期と景気対策により個人消費の底上げが図られる
■実質賃金のマイナスにより消費支出もマイナス
アベノミクスにより円安株高が進行し、企業業績の改善に伴って賃金は上昇してきています。来年度に向けても現政権は賃上げ要請をしており、賃金の増加傾向が期待されます。ただし、実質賃金のマイナス傾向が示すように、賃金上昇が消費に結びついているとは言い難い状況にあります。総務省が発表した9月の家計調査を見ると、物価変動を除いた実質消費支出は前年同月比▲5.6%と、消費税増税が実施された2014年4月以降マイナスが続いており、消費は勢いを欠いています。
■消費底上げのための増税延期と経済対策
18日、安倍首相は消費税率の再引き上げ延期を表明しました。首相は会見で、個人消費の動きが弱いことを指摘しています。今後は、個人消費を底上げすべく緊急の経済対策がまとめられるほか、企業に対して法人税減税をする一方で更なる賃上げを要請すると見られるなど、2017年4月の消費税率再引き上げを確実に実施するための政策が採られる見込みです。まずは消費税増税延期が、消費者マインドの改善につながることが期待されます。