消費税率引き上げの判断(日本)【キーワード】
2014年11月19日
<今日のキーワード>
消費税率は2012年度の消費税法の改正で、2014年4月に5%から8%、2015年10月に10%へ引き上げが決定しています。ただし、経済状況などを踏まえ、延期や停止などができるとされています。2015年10月からの消費税率の再引き上げについては、7-9月期のGDP成長率などを踏まえ、12月中に判断するとしていましたが、18日、安倍首相は消費税率再引き上げの延期を表明しました。
【ポイント1】2012年に与野党合意のもとに決定
消費税は社会保障、少子化対策費用などへ使途を明確化
■消費税率の引き上げは、2012年8月に「消費税増税を柱とする社会保障・税一体改革関連法案」により決定しました。また、地方税収分の一部を除き消費税収入については、年金、医療及び介護などの社会保障費用、少子化対策に要する費用に充当すると、使途が明確化されました。少子高齢化問題の対応をするための財源として、当時の民主党政権下で5党合意のもとで決定されました。
【ポイント2】財政健全化に寄与
消費税は税収の3割超を占める
■消費税増税は、財政健全化への施策のひとつでもあります。2013年8月の閣議了解で、国、地方を合わせた基礎的財政収支について、債務残高を対GDP比で2010年度の▲6.6%から2015年度には▲3.3%へ半減させ、2020年度までに黒字化することを目標とし、これを国際公約としています。
■2014年度予算の消費税による税収は、4月に税率が5%から8%に引き上げられたこともあり、前年度予算比+4兆6,900億円の15兆3,390億円が見込まれます。これは一般会計歳入総額の16.0%、租税及び印紙収入の30.7%を占め、重要な財源となっています。消費税率の引き上げを1年半延期することで、その間の約6兆円弱の税収が減少する見込みです。
【今後の展開】消費税率の再引き上げ延期によりデフレ脱却をサポート
■消費税率再引き上げを延期、解散総選挙へ
18日、安倍首相は2015年10月に予定されていた消費税率の再引き上げを1年半延期し、この際、景気判断条項を付すことなく2017年4月に確実に実施すると表明しました。再引き上げ延期の判断は、発表された7-9月期の実質GDP成長率が予想外に2四半期連続のマイナスとなったことなどが背景です。また延期することに対し、国民の信を問うため、衆議院を解散する方針を明らかにしました。
■当面の景気回復を優先
首相は18日の会見で、2017年4月の税率引き上げを確約することで、財政健全化路線に変更がないことを強調しました。一方、税率引き上げを延期することによりデフレ脱却の道筋を確かなものにするねらいがあるとしています。今後は財政健全化に向け、将来の消費税率再引き上げが可能となるよう、景気回復を確実なものにする景気対策の追加などが期待されます。