【キーワード No.1,350】「ヒット商品番付」、節約志向の中に光る“価値組”(日本)
2014年6月16日
1.「ヒット商品番付」とは?
その時々の流行や経済情勢を反映する指標として、複数の企業や団体がヒット商品などに関するランキングを発表しています。例えば、日本経済新聞社では「日経MJヒット商品番付」として、消費動向や世相を踏まえて、売れ行きや開発の着眼点、産業構造や生活者心理に与えた影響などを総合的に判断し、相撲の番付になぞらえたランキングを発表しています。
2.最近の動向
先週発表された「日経MJ2014年上期ヒット商品番付」では、東は「格安スマホ」が、西は「アナと雪の女王」が横綱となりました。「格安スマホ」は、利用料が大手携帯電話会社の半額以下と安く、販売と同時に完売するケースも見られました。「アナと雪の女王」はディズニー創立90周年記念作品で、3月中旬からの公開で既に国内興行収入は歴代3位(6月13日時点)となり、主題歌も大ヒットするなど日本に旋風を巻き起こしています。
また大関には、東は「価値組消費」が、西は「駆け込み需要」がランクインしました。今年上期は4月の消費税増税を抜きには語れません。3月までは「駆け込み需要」が、4月以降はその反動が生産・消費動向に大きな影響を与えています。一方、「価値組消費」は、多少高価格でもそれに見合う価値があるとされ、増税後の消費をけん引し、「勝ち組」とかけて上位になりました。

3.今後の展開
「ヒット商品番付」には、相撲と同様にいくつかの賞が設けられています。今回の殊勲賞には「正社員化」が選ばれました。アベノミクスにより、円安・株高となり企業業績も好調となるなか、今年の春闘で賃上げを実施する企業が大幅に増加しただけでなく、パート社員などを「正社員化」する動きも見られました。賃金の上昇や処遇の改善など、労働環境の改善が「価値組消費」といった動きを支えていると思われます。
また「格安スマホ」にみられる節約志向が根強いなか、景況感や労働環境の改善が「貯蓄から投資」への動きに影響を与えている様子もうかがわれます。東の小結にランクインした「NISA」は、2014年1月から導入された「少額投資非課税制度」の愛称で、専用の口座を開設すると、毎年100万円までの投資に対する配当金や譲渡益が非課税となります。主要証券会社に限ると口座開設数は421万件となり、6,000億円以上の資金が株式市場などに流入しました(2014年3月末時点)。アベノミクスが一時の「魔法」に終わらず、今後も実態経済や市場の成長を促すよう、成長戦略をはじめとする次なる一手が期待されます。