【キーワード No.1,347】日本株を買い越す信託銀行、その背景は?(日本)
2014年6月11日
1.投資家の日本株売買の動きを知るには?
東京証券取引所(以下、東証)が「投資部門別売買状況」を発表しています。これは、東証が証券業者(資本金30億円以上)から、あらかじめ定められた投資部門別に日本株の売りと買いの株数と代金の報告を受け集計したものです。通常は毎週木曜日に前週の売買が発表されます。
2.最近の動向
6月5日に発表された5月第5週(5月26日~30日)の「投資部門別売買状況」によると、信託銀行が2,499億円の買い越しとなりました。一週間の買い越し額としては、2009年3月第4週(2009年3月23日~27日)以来の規模です。また、5月月間では6,873億円の買い越しでした。こちらも2009年3月以来の規模です。
信託銀行の株式売買は、銀行本体によるものは少なく、信託という形で資金を預けている顧客の資金を、顧客または仲介業者の指示に基づいて行うものが多くを占めます。今般の日本株買い越しは、信託顧客の中でも、株式や債券の売買を自ら判断する企業年金によるものであるとの見方があります。

3.今後の展開
企業年金は一定期間毎に株式、債券など複数の資産に対する配分比率を定め、年金受給者の承認を得た上で運営します。資産運用における行動パターンは一般に「逆張り型」と言われ、配分比率が相対的に低い資産に資金を投じる傾向があります。単純化して言うと「安くなった資産」を買い、「高くなった資産」を売るということです。ただし、現在のように株価が大きく下落していない中で日本株を買い越してきたことには意外感があります。
信託銀行の大幅な買い越しの理由としては、中長期的な日本経済の先行きを明るく見立て、日本株の配分比率を引き上げたことが挙げられます。また、公的年金改革の一環として株式への投資拡大が期待されていることが、企業年金の投資行動に影響を与えた可能性もあります。いずれにしても、国内投資家の売買占有率が3~4割にとどまる日本株市場で、安定した国内の長期投資家の存在感が高まることは、市場の安定度向上に資するものと期待されます。