【キーワード No.1,339】増税後の消費の落ち込みは想定内(日本)
2014年5月30日
1.「消費動向」を把握するには?
全体的なモノの消費動向を把握できる代表的な指標として、経済産業省が毎月発表する「商業動態統計調査」が挙げられます。大きく「卸売業」と「小売業」に分けられ、特に「小売業」の動向が注目されます。
2.最近の動向
消費税増税直後の4月の商業動態統計調査(5月29日発表)では、「小売業」の商業販売額は前年同月比▲4.4%の11兆110億円と、9カ月ぶりに減少しました。このうち大型小売店に限ると同▲6.1%と、「小売業」全体よりも減少幅が大きくなりました。
小売業を業種別に見ると、機械器具が同▲12.3%(3月は同+37.3%)、自動車が同▲10.2%(同+9.2%)、百貨店等が同▲8.9%(同+19.6%)と、3月に上昇幅が大きく、駆け込み需要が強かった業種においてより大きく反動減が表れました。ただし、3月までの増加傾向や上昇幅と比べて、4月の減少幅はさほど大きくはなく、落ち込みは概ね予想された範囲といえそうです。
また業態別にみると、百貨店は同▲10.6%、スーパーは同▲3.9%、コンビニは同+4.2%となりました。さらに品目別では衣料品は同▲10.5%、飲食料品は同▲1.4%と、より高額なものの消費は大きく減少した一方、日用品など身近なものの減少は小幅にとどまりました。

3.今後の展開
22日に発表された日銀の金融経済月報(2014年5月)では、「自動車や家電など駆け込み需要の反動の影響からはっきりと減少している」と指摘されたうえで、「企業からの聞き取り調査なども踏まえると、耐久財の反動減の規模は概ね事前の想定の範囲内」とされ、基調的には緩やかな回復を続けているとの景気判断がなされています。基調的な消費の回復のためには、賃金上昇に裏付けられた消費者心理の向上が必要です。今春多くの企業が賃上げを実施し、夏の賞与も大幅な増加が見込まれるなか、今年はこうした賃金の上昇が消費を下支えしそうです。今後は賃上げが今年限りにとどまらず、将来への期待とともに消費、企業業績、雇用、物価へと波及する経済の好循環に繋がることが期待されます。