【キーワード No.1,335】「家計の貯蓄額」は8年振りに過去最高(日本)
2014年5月26日
1.家計の「貯蓄・負債額」を把握するには?
総務省が発表する『家計調査』で把握することが出来ます。この調査は、全国の二人以上の世帯(約8,000世帯)を調査対象としており、毎月の「家計収支編」では消費支出や収入について発表されます。また「貯蓄・負債編」は四半期毎に発表され、10-12月期平均結果公表の際に、年平均結果も発表されます。
2.最近の動向
総務省が16日に発表した「2013年平均の家計調査(貯蓄・負債編)」によると、1世帯当たりの平均貯蓄額(預貯金、保険、有価証券などの合計)は前年比+4.9%の1,739万円でした。これは2005年の1,728万円を8年ぶりに上回り、比較可能な2002年以降で最高となりました。ただし、全体の10%の世帯は貯蓄額が100万円未満であり、これを含め平均を下回る世帯は68%に上り、貯蓄保有世帯の中央値は1,023万円となっています。また、勤労者世帯に限ると同+0.9%の1,244万円、高齢無職世帯に限ると同+10.1%の2,363万円となっており、高齢無職世帯の貯蓄額の増加が顕著であり、全体の増加をけん引しました。
一方、1世帯当たりの平均負債額は同+6.4%の499万円となりました。昨年は、今春の消費税増税前の駆け込みや好景気を受けて住宅を購入する人が多く、住宅ローンなどが増加したとみられます。

3.今後の展開
貯蓄の内訳をみると、預貯金(普通・定期など)が全体の62.1%と前年(64.0%)から低下したものの、依然高位を保っています。一方、2009年以降減少していた有価証券は13.8%と前年(11.6%)から増加しました。2012年は、年末の政権交代以前は円高・株安基調だったことからも有価証券が減少傾向でしたが、2013年は円安・株高局面にあたり、貯蓄額を押し上げました。貯蓄額が3,000万円以上の世帯に限ると有価証券は18.9%(前年は15.8%)と全世帯の割合よりも高く、より円安・株高の恩恵を受けたと思われます。
2013年は、アベノミクス1年目で、黒田日銀の異次元緩和にあたる第一の矢「大胆な金融緩和」、15カ月予算に代表される第二の矢「機動的な財政政策」が功を奏し、先行きへの期待感からも円安・株高が進行しました。しかし、第三の矢「民間投資を喚起する成長戦略」が市場の期待に応えるものではなく、足元ではウクライナなどの地政学的リスクや新興国景気の先行き不透明感もあり、円安・株高の進行が停滞しています。政府は6月にも新たな成長戦略をまとめる予定であり、法人税減税をはじめどのような内容が示されるのか、アベノミクスは再び市場の期待に働きかけることが出来るのか、その内容に注目です。