【キーワード No.1,287】2014年の春闘、主要企業の「ベア」が実現(日本)
2014年3月13日
1.「ベア」と2014年の春闘とは?
「ベア」とはベースアップの略で、賃金体系などを変更して基本給を引き上げることを示します。年齢や勤続年数に伴う定期昇給とは違い、将来的な賃金カーブの押し上げにつながります。ベアは企業への負担も少なくないため、2000年代には徐々に見送られるようになりました。
ただし、2013年中には世界景気の回復や円高是正を背景に、企業業績が大きく改善しました。また、政府が「経済の好循環実現に向けた政労使会議」を開催し、賃金上昇によるデフレ脱却という、大まかな考え方を取りまとめた背景もあり、2014年の春季労使交渉(春闘)ではベアの有無が焦点となりました。
2.最近の動向
12日には自動車や電気機械などの主要企業が労組に対して一斉回答し、多くの企業でベアを含む賃金上昇が実現しました。
自動車や電気機械の大手メーカーでは、労組が3,500円~4,000円台のベア(月額、以下同様)を要求しました。対して、自動車は2,000円台のベアが主流で、一部で3,000円台との回答もありました。電機大手6社は横並びで一律2,000円としました。
今年は小売大手にもベアの動きが広がったほか、パートや派遣社員の待遇改善を進める企業も見られます。
3.今後の展開
今後4月にかけ、中小企業の労使交渉が本格化します。企業には、柔軟に調整しやすい一時金で対応したいとの意識は根強いと思われますが、こうして主要企業が動いたことは後押し材料です。また、ベアがイメージアップにつながりやすい環境となっており、余力のある中小企業にも広がりは期待できそうです。
なお、今回の春闘の焦点はベアでしたが、労使協議の場は、今後の経営、働き方のビジョンをすり合わせる大きな機会であることも忘れてはいけません。各企業、あるいは日本経済が構造改革を進める上で、定年退職後の継続雇用、女性の産後・子育て後の社会復帰、海外での勤務・雇用体系など、取り組むべき課題は増えています。ともすれば硬直的ともなりやすい労使関係ですが、今回のベアが関係を「問題解決型」へと向かわせるきっかけとなることが望まれます。「労」、「使」、そして今年のベアの地ならしを担った「政(政府)」が今後も好循環を後押しすることができるか、新年度に入ってからも注目されます。