【キーワード No.1,253】日銀の「展望レポート」は物価上昇見通しを維持(日本)
2014年1月23日
1.日銀の「展望レポート」とは?
日本銀行(日銀)が公表する、『経済・物価情勢の展望』のことです。日銀の正副総裁を含む9人の政策委員による経済・物価の見通しや金融政策の運営方針をまとめた報告書です。この報告書では、政策委員による「実質GDP成長率」や「消費者物価指数」の予想値の幅とその中央値が示されます。4月と10月の年2回公表されるほか、1月と7月には中間評価が公表されます。
2.最近の動向
21日~22日、日銀は金融政策決定会合を開き、昨年4月に導入した「量的・質的金融緩和」を据え置きました。
景気判断については、緩やかに回復しているとの判断を据え置いたほか、底堅い個人消費の分野において、消費税率引き上げ前の駆け込み需要も見られているとしました。また、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は1%台前半となり、予想物価上昇率は全体として上昇していると見られることから、消費税率引き上げの直接的な影響を除いても、しばらくの間1%台前半で推移するとしました。
「2013~2015年度の政策委員の大勢見通し」においては、前回10月に公表された「展望レポート」での見通しについて中間評価が行われました。しかし、実質GDP成長率および消費者物価(同)共に、10月時点から0.1%程度の上下への振れはあったものの、ほぼ見通しが据え置かれました。
3.今後の展開
日銀は、成長率、消費者物価ともに、昨年10月の「展望レポート」で示した見通しに沿って推移すると見込んでいます。その上で、2%の「物価安定の目標」の安定的で持続的な達成のために、当面は「量的・質的金融緩和」を継続すると思われます。しかし市場では、昨年末に発表された政府の経済対策をもっても、消費税増税後の景気減速の大きさを不安視する向きも多く、追加の金融緩和への期待が根強くあります。同様に、物価は順調に上昇してきているものの、日銀の目標である「2年で2%」の達成は困難との見方が大勢となっています。22日昼の日銀の金融政策決定会合の結果公表後は、追加金融緩和への一部の期待が削がれたことなどから、日経平均株価は一時前日比で165円ほど値下がりしました(その後は値を戻し、終値では前日比+25円の1万5,820円96銭)。今年4月にはいよいよ消費税率の引き上げが行われ、また、「量的・質的金融緩和」の導入から1年を迎えます。「異次元緩和」とも呼ばれる現状の金融緩和策のみならず、追加の金融緩和策が施されるのか、引き続き日銀の金融政策に注目です。