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【キーワード No.1,269】新興国の経常収支と通貨の動向(新興国)

2014年2月17日

1.経常収支とは?

 経常収支とは、国際収支統計の一項目で、財(貿易収支)、サービス(サービス収支)、利子配当金(所得収支)などの国際的な受け払いの差額を表す指標です。国際収支統計の項目には他に、資本収支と外貨準備増減があります。
 経常収支が赤字の場合、海外からの投資資金の流入(資本収支の黒字)や、外貨準備の取り崩しでまかなう必要があります。ただし、投資資金には動きが速いものがあることや、外貨準備が減少することなどから、赤字の大きい新興国は経済や通貨が不安定になりやすい傾向があります。

2.最近の動向

 1月下旬以降、米国のQE3縮小やアルゼンチンの信用不安などから投資家のリスク回避姿勢が強まり、為替市場では新興国通貨が売られる傾向になりました。特に、新興国のなかでも経常収支の赤字が大きいトルコ、南アフリカ、ブラジル、インド、インドネシアといった国の通貨は、不安定な動きが目立ちました。
 これら5カ国では通貨安などによるインフレ圧力が従来より懸念されており、それぞれの中央銀行が昨年12月から今年1月にかけて政策金利を引き上げました。利上げの影響などから、これら新興国の通貨は、足元で落ち着きつつあります。

3.今後の展開

 新興国の通貨安傾向が和らいだきっかけのひとつは、トルコ中央銀行による大幅な利上げでした。経常収支の赤字が大きい新興国では利上げにより高金利が魅力となり、海外からの投資資金の流入期待の高まりから通貨安に歯止めがかかったと思われます。
 また一部の新興国では、これまでの通貨安効果で輸出が増加したことなどから経常収支の改善が見られ、通貨安圧力が低下しています。インドでは、金輸入の抑制策による輸入の減少もあり、貿易赤字が縮小傾向にあります。こうした傾向が続く場合には、通貨の安定度合いが一段と強まると思われます。
 一方、ブラジルやトルコなどの経常収支の改善が見られない国では、政策金利が比較的高いことに加え、政府が海外からの直接投資の誘致に積極的なことなどから、旺盛な投資資金の流入が通貨を支えている側面もあります。このように新興国の間でも、経常収支の動向と通貨が下げ止まりつつある要因には違いがあります。通貨が今後も持続的に安定するためには、貿易収支の改善を通じた経常収支の赤字縮小や、中央銀行や政府による投資資金流入増への取り組みの継続が鍵になりそうです。