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2015年を振り返るキーワード  「欧州への難民と地政学リスク」(欧州)【キーワード】

2015年12月28日

<今日のキーワード>
昨年は60万人であった欧州連合(EU)への難民申請者が、今年は11月末で100万人を超えました。特にシリアからの難民が増加し、全体の3割弱を占めました。EUは難民の受け入れに人道的な見地から総じて寛容でしたが、難民が想定を上回る規模となり、10月に受け入れ制限方針に転じました。11月のパリ同時多発テロ犯人の一部が難民に紛れて欧州入りしたことも、受け入れ制限方針を後押ししたと見られます。

【ポイント1】難民の受け入れ制限へ

受け入れに寛容だったメルケル首相の支持率急低下が背景
■ドイツのメルケル首相は、人道的見地から難民の受け入れに寛容でしたが、難民の流入が急増する問題に直面しました。受け入れ施設の不足や難民と地域社会とのトラブルなどが社会問題化し、世論調査でメルケル首相の支持率が急落、これらがドイツの難民受け入れ制限への方針転換の背景です。他のEU首脳もドイツの方針転換に同調しました。

■難民認定手続きを厳格化したことから、11月の月間難民申請者数は2万人に急減しました。また、来年6月末を期限に国境を警備する欧州警備隊の創設に関して意見をまとめる段取りです。シリアに隣接するため難民の経由国となっているトルコを支援し、シリア難民を同国にとどめるよう、連携強化の方針も打ち出しました。

【ポイント2】根本的解決にはシリアの内戦終結が必要

解決の糸口見えず
■パリで、11月に同時多発テロが起こったことも、難民の受け入れ制限強化に影響したと見られます。

■シリア難民の問題は、シリアの内戦終結が解決策です。しかし、ロシアと欧米の対立に、イスラム国の問題が絡まり、解決の糸口が見えません。

【今後の展開】経済にはプラスの面も、地政学リスクに引き続き注意

財政拡大などは経済にプラス
10月のEU首脳会議で、EUは難民問題への支出拡大を決めました。加盟国にも相応の財政負担を求めているため、財政拡大が短期的にはGDPの上振れ要因となりそうです。また、労働力人口が減少する欧州にとっては、貴重な労働力として、長期的には成長要因になるとの指摘もあります。

地政学リスクへの警戒も必要
一方、難民増加で政治の不透明感が強まることには警戒が必要です。英国は難民を含む移民支援の削減をEUに提案しており、受け入れられなければEU離脱を問う国民投票の前倒しを示唆しています。また、シリアをめぐるロシアとトルコの関係も悪化しており、難民問題に起因する地政学リスクに注意が必要です。

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