総選挙で「ギリシャ危機」回避なるか(欧州)【キーワード】
2015年1月8日
<今日のキーワード>
1月25日のギリシャ総選挙は緊縮財政の継続が争点です。最大野党は賃上げや雇用拡大を掲げ、そのために債務の一部減免をユーロ圏諸国などに強く求める方針です。サマラス首相率いる連立与党は債務不履行の回避を優先しつつ、金融支援の条件緩和を支援側に譲歩させ、財政の自由度を高めて景気回復を目指す方針です。
【ポイント1】選挙の争点は、緊縮財政路線の継続
連立与党も支持率アップを狙い、緊縮緩和に前向きへ
■3回の大統領選で、大統領を選べなかったことから、昨年12月29日にギリシャ議会は解散しました。連立与党の議席は解散時で過半数をわずかに超える程度であり、今回の選挙で過半数を得られるか微妙なところです。最大野党は債務の一部減免を強く求める方針を掲げ、政権を奪取する勢いです。
■連立与党は、金融支援する欧州連合(EU)などの方針に従い、これまで緊縮的に財政を運営してきました。その結果、財政は改善傾向にある反面、国民の緊縮疲れが進み、緊縮緩和への期待が高まっています。連立与党は昨年夏以降、緊縮緩和に前向きの姿勢を見せ、EUが難色を示す2015年度予算を編成しました。支持率のアップを狙い、支援側との協調を前提とした緊縮路線の緩和も行っています。
【ポイント2】金融市場は不安定化
株安・ユーロ安・債券安
■最大野党の政権奪取による政局混迷を嫌い、昨年12月中旬以降、欧州の株式市場は不安定となりました。ユーロは米ドルに対してこの1カ月で約3%下落しました。ギリシャ10年国債の利回りは上昇し、10%に近づきました。
【今後の展開】金融危機への拡大リスクは安全網の強化により低下
■連立与党の勝利なら、金融市場は安定へ
最大野党が勝利し、債務の一部減免を支援側に強く求めて交渉が停滞すると、ギリシャ国債の債務不履行懸念が強まりかねません。ユーロ離脱の憶測も高まるとみられます。一方、連立与党が勝利すると、これまでの実績から支援側も態度が軟化し、譲歩を引き出すことも可能となる可能性があり、金融市場は安定するとみられます。
■銀行破たんの金融危機への拡大リスクは低下
前回2010年の金融危機時とは異なり、欧州では単一監督メカニズム(SSM)が昨年にスタートするなど、金融危機への安全網が強化されています。ギリシャ国債を保有する銀行の経営が不安定化し、破たん懸念から金融危機が拡大するリスクは低下しているとみられます。