【キーワード No.1,371】ポルトガルで金融不安?南欧債券への影響は?(欧州)
2014年7月15日
1.ポルトガルでの金融不安とは?
ポルトガルの大手銀行バンコ・エスピリト・サント(BES)の連結親会社であるエスピリト・サント・フィナンシャル・グループ(ESFG、ルクセンブルク籍)が7月10日、上場している株式、債券の取引を停止すると発表したことから、金融不安へと発展する懸念が拡大しました。これは、ESFGの最大株主で、コングロマリット(複合企業)持ち株会社でもあるエスピリト・サント・インターナショナル(ESI)が7月8日、短期債務の返済を一部延期したことが判明し、ESIに対して債権を持つESFG、BESに対する懸念が拡大したものです。
2.最近の動向
ESFGに対する不安は上場株式、債券の取引停止以前から市場でささやかれており、同社株式やBES株式は4月頃から下落傾向が続いていました。しかし、取引停止の発表で、改めて不安が拡大しました。ポルトガル10年国債のドイツ10年国債に対する利回り上乗せ幅は、前週末の7月4日時点では2.32ポイントだったものが、10日には2.79ポイントまで拡大しました。しかし、その後は落ち着き、11日時点では2.66ポイントと、やや縮小しています。
欧米の格付会社はESFGとBESの格付けを一斉に引き下げました。例えば、ムーディーズ社は11日、BESの預金債務格付けをBa3(格下げ方向で見直し中)をB2(同)へ、ESFGの発行体格付けをB2(同)からCaa2(同)へと引き下げました※。

3.今後の見通し
今回の市場の混乱は個別企業の問題として受け止められつつあります。また、BESの自己資本も、エスピリト・サントのグループ企業向け債権がすべて不履行となっても、国際的な自己資本比率の要求水準を下回ることはないことが明白です。仮に、金融不安が他国へ広がる気運が出てきたとしても欧州中央銀行(ECB)による無制限資金供給で資金繰りが担保されているため、欧州の金融機関が破たんに追い込まれるリスクは極めて小さいと思われます。ポルトガル国債利回りのドイツに対する上乗せ幅が拡大すると同時にアイルランド、ギリシャ、スペイン、イタリアといった、財政面で脆弱と見られている南欧諸国の国債利回りも一斉に上昇しましたが、早くも沈静化しつつあります。政府債務に対する格下げの動きもなく、南欧債券への影響は程なく終息すると思われます。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。