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【キーワード No.1,320】改善が続く欧州の財政収支と経済成長(欧州)

2014年5月1日

1.欧州の財政規律は?

 欧州連合(EU)の加盟国は、原則として毎年の財政赤字を対名目GDP比3%以内、債務残高を同60%以内とすることを目標としています。リーマン・ショック以降、欧州各国の景気が後退したことなどにより、各国の財政状況や金融機関の財務状況が悪化しました。このため、2009年には多くのEU加盟国がこの目標を達成できなくなり、現在各国はこの目標達成に向け、財政緊縮など立て直しを図っています。

2.最近の動向

 4月下旬、EU統計局はユーロ圏(18カ国)およびEU全体(28カ国)の2013年の財政赤字と債務残高を公表しました。
 財政赤字は、ユーロ圏が対名目GDP比3.0%と前年の同3.7%から縮小しました。また、EU全体では同3.3%と前年の同3.9%から縮小しました。国別では、ルクセンブルクが同0.1%の財政黒字となったほか、ドイツは収支がほぼ均衡でした。このほか、ギリシャ(同12.7%)、アイルランド(同7.2%)、スペイン(同7.1%)など10カ国が3%以上の財政赤字となりました。
 一方債務残高は、ユーロ圏が同92.6%と前年の同90.7%から拡大し、EU全体でも同87.1%と前年の同85.2%から拡大しました。国別では、ギリシャ(同175.1%)、イタリア(同132.6%)、ポルトガル(同129.0%)など、6カ国で100%を超えています。

3.今後の展開

 EU各国では、財政赤字等の目標達成のため、財政緊縮が進められていました。しかし、それにより成長が抑制されることでさらに赤字が増大するという悪循環も懸念され、一昨年秋のIMF年次総会では行き過ぎた財政緊縮の見直しなどが提言されました。こうしたことや、欧州中央銀行による金融緩和、世界経済の回復を背景に、EU全体のGDP成長率は直近(2013年10-12月期)まで3四半期連続の前期比プラスと、景気回復が続いています。景況感なども回復が続いており、今後の財政赤字縮小を支えると思われます。
 一方、欧州では金融システムの一層の改善のため、金融機関に対して資産査定(ストレステスト)を実施しています。4月29日には次回実施分について、EU各国それぞれの銀行セクターの半分以上にあたる124行を対象に5月末頃から開始し10月末頃に結果を公表することが示されました。今回はこれまでで最も厳しいシナリオの下でのストレステストとなりますが、欧州域内の一層の金融システムの安定化が示され、加盟国の財政リスクの低減に繋がることが期待されます。

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