中国の「通貨制度」(中国)【キーワード】
2015年8月17日
<今日のキーワード>
中国の「通貨制度」は、中心となる交換レート(基準値)とその変動幅が定期的に調整される変動相場制です。中国人民銀行は11日、基準値の算出方法を、前日の終値との乖離を縮小する方法に変更しました。変更初日、基準値を人民元安方向に設定したため、「人民元切り下げ」と解釈されました。13日まで続いた対ドルでの切り下げ幅は、合計5%弱になりました。
【ポイント1】一定の範囲内で通貨の変動を許容する変動相場制
変動許容幅は徐々に拡大、対ドルでは上下2%
■中国は2005年7月に、事実上の固定相場制から一定の範囲内で通貨の変動を許容する変動相場制に移行しました。厳密には、基準値を定期的に変更し、必要に応じて変動幅も定期的に調整するクローリング・バンド制と呼ばれる制度です。変動幅は通貨毎に設定されます。
■1日当たりの変動許容幅は徐々に拡大され、現在対ドルでは基準値の上下2%となっています。
【ポイント2】基準値の算出を、市場実勢との乖離を縮小するよう変更
大幅切り下げは終了
■基準値は、中国外貨取引センターが取引開始前に市場参加者から報告される為替レートを基に決定し、毎朝公表します。人民元の対ドル実勢レートは、年初からの基準値よりも人民元安方向に乖離する傾向が続き、8月10日までの基準値と終値の平均乖離率は1.5%でした。
■今回、この基準値を市場実勢に沿って乖離率が縮小するよう改めたことが、「人民元切り下げ」と解釈されました。乖離率は13日に0.0%となって、乖離は解消され、大幅な切り下げ局面はいったん終了したと見られています。
【今後の展開】段階的に資本移動と通貨取引の自由化を進める
■目指すは、資本移動と通貨取引の自由化
国際金融制度には、①為替相場の安定(固定相場の維持)、②独立した金融政策、③自由な資本移動、この3つを同時に達成することは出来ない「国際金融のトリレンマ」という命題があります。中国はこれまで、①と②を選択していましたが、今後は①を放棄し、②と③を選択し、資本移動と通貨取引の自由化を段階的に進めると見られます。
■極端な人民元安進行の可能性は小さい
現時点の通貨制度はこの移行過程にあり、当局が適切と判断すれば、基準値や変動幅の変更や通貨介入によって、人民元を管理することが可能です。この点を踏まえれば、この先極端なペースで一方的に人民元安が進行する可能性は小さいと見られます。