【キーワード No.1,278】人民元安で高まる「変動幅の拡大期待」(中国)
2014年2月28日
1.人民元の「変動幅拡大」とは?
中国は「管理変動相場制」によって人民元の1営業日当たりの対米ドルの変動幅を前営業日から±1%以内に抑えています。これは多額の経常黒字を背景とした通貨高圧力を抑えるためであり、為替介入などの手段を用いてこれを達成しています。一般に、変動幅の拡大は人民元の上昇要因と見られます。
2.最近の動向
習近平体制は2013年11月の「三中全会」で市場原理の重視を打ち出しました。市場では、最も進めやすい改革は人民元の変動幅拡大であるとして、早ければ2014年前半にも実施される、との観測が増していました。
こうしたなか、先週後半から人民元の下落幅が大きくなっています。背景には、シャドーバンキングなどへの懸念による売りの存在も指摘されますが、市場が参考にする当局発表の「中間レート」が徐々に元安方向に設定されたこともあります。
当局の姿勢を見て、市場では「近い将来、変動幅が拡大される」との期待が高まりました。中国政府は、変動幅の拡大を前に従来のようなほぼ一方向の上昇基調ではなく、人民元が上下双方向に動くと印象付けようとしているとの指摘が聞かれます。
3.今後の展開
当局の姿勢に加え、改革の具体化が進む全人代(3月5日から10日間前後)の開催が間近に迫っており、変動幅の拡大のタイミングは近づいていると思われます。実施の場合は、習近平体制が早期に改革に着手しているとして、市場に好印象を与えそうです。
2014年は、引き締め気味の金融姿勢、シャドーバンキング規制の強化、大都市の不動産価格へのけん制などが想定され、過度の資金流入期待は抑制されそうです。このため、人民元が急上昇して景気抑制要因となる可能性は限定的で、中国政府としても改革を進めやすいタイミングと見られます。
一方で、人民元が経常黒字や国際化の進展期待などを背景に、強い通貨高圧力を受けているという構造には変わりありません。今後とも、緩やかな人民元高は続きそうです。また、これは中国の購買力上昇、物価高の抑制要因となり、高めの成長持続と構造改革の双方に資するものと思われます。