「総選挙」の焦点は労働組合関連法案 (豪州) 【キーワード】
2016年6月30日
<今日のキーワード>
豪州では2016年7月2日に、上下両院の解散・「総選挙」が予定されています。両院の同時解散・「総選挙」は1987年以来、29年振りのこと。解散・「総選挙」の道を選んだターンブル首相の狙いは、①上院で否決された労働組合関連法案を成立させる、②下院は自由党、国民党からなる与党の保守連合が議席の60%、上院は労働党、緑の党など野党が同じく57%を占めるという「ねじれ」現象を解消する、ことにあるようです。
【ポイント1】労働組合関連法案の成立を目指して総選挙へ
過激な労働運動の抑制が狙い
■豪州経済の課題は、非資源セクターの比重を一段と高め、資源価格の変動に左右されにくい体質に転換することですが、その障害となっているのが労働組合の行き過ぎた職場介入やストライキです。
■こうした状況を打破するため、ターンブル首相は今年4月に臨時議会を召集し、建設業界監視機関の復活や労働組合を監視する委員会の設置に関する法案を提出しましたが、上院で否決されました。
■今回の「総選挙」の焦点は、与党の保守連合が上下両院で過半数を制し、労働組合関連法案を成立させることができるか否かにあるといえます(全体の議席数は上院が76議席、下院が150議席)。
【ポイント2】世論調査では与党が優勢

ただし、差は僅か
■6月27日に実施された最新の世論調査によれば、与党の保守連合の支持率は43%、労働党は36%、その他の政党が21%でした。
■その他政党を除いた保守連合と労働党に絞ると、保守連合が51%、労働党が49%となります。いずれも与党の支持率が野党を上回っています。
■また、首相として望ましいのはターンブル現首相が45%、ショーテン労働党党首が30%でした。世論調査を見る限りでは与党が優勢ですが、差は僅かであり、予断を許さない状況です。
【今後の展開】与党が勝利すれば、経済体質の転換が促進されよう
■与党勝利は豪経済の成長促進につながろう
与党保守連合が上下両院で過半数を獲得できれば、労働組合関連の法案の成立が見込まれ、企業の生産性向上を通じて経済成長を促進すると予想されます。株価にとっては、上昇を支える要因となりそうです。
■政治情勢は重大な局面
一方、野党勝利の場合、労働組合関連法案は廃案となる可能性が高く、労働運動が引き続き企業活動の足枷となる恐れがあります。この意味で、豪州の政治情勢は注目すべき局面にあるといえます。