トルコの新大統領・新首相(トルコ)【キーワード】
2014年8月29日
<今日のキーワード>
8月28日、エルドアン氏の大統領就任式が行われました。同氏は与党公正発展党(AKP)の発足以来党首を務め、2003年から10年以上にわたり首相を務めた実績が評価され、国民投票で選出された初の大領領になりました。注目されていたAKPの後継党首及び首相には、2009年以来外相を務めたダウトオール氏が任命され、組閣に取り組み始めました。
【ポイント1】ダウトオール新首相は学者出身、政治面の力量は未知数
エルドアン政権の実力者が閣内に残り、経済政策などを支える見込み
■ダウトオール氏は、政治学博士の学位を持ち、学者としての活動を経て2002年に首相の主席外交顧問となり、2009年から外相を務めていました。国会議員としては1期目で約3年務めたにすぎず、政治実績に乏しい側面があります。一部では、エルドアン氏が大統領として政治的影響力を維持しやすい人選との見方があります。新首相の政治面の力量は未知数ながら、ババジャン前副首相(経済担当)、シムシェキ前財務相といった実力者が閣内に残り、経済政策などを支えると見られています。
【ポイント2】大統領と首相の役割に不透明感
大統領の権限強化に向け、憲法改正の方向
■トルコでは、大統領が国家元首を務め、首相の任命や条約の締結などを行います。ただし、これまでは儀礼的な職位であると見なされており、政治の実権は首相が握ってきました。今後は実力者の大統領と、力量が未知数の首相という従来なかった組み合わせになることから、国政の舵取りの中心が誰なのか、見極めづらい体制になります。
■エルドアン氏は、大統領の権限を強化し、政治の実権を首相から移す考えと伝えられています。AKPはそのために必要な憲法改正を議会で可決するため、他党に協力を呼び掛けるほか、来年に実施予定の総選挙で議席数の上積みをねらうと見られています。

【今後の展開】経済政策の継続は安心材料ながら、反政府デモなどには要注意
■積極的な経済政策の継続は市場の安心材料
エルドアン氏は、積極的なインフラ政策やエネルギー政策などを通じて長期的な経済規模の拡大に取り組み、高い経済成長を実現した手腕が高く評価されてきました。ダウトオール新首相の下でも従来の経済政策が継続されるとの期待から、市場には安心感が広がりつつあります。
■政権の実質長期化に対する批判に注意が必要
大統領の任期は5年間で、再選が1回に限り可能なため、エルドアン氏は首相在任と合わせ20年以上政治の実権を握ることができます。同氏は、イスラム主義的な志向や、強権的な手法に対して一部に強い批判があります。政権の実質的な長期化に対し、昨年半ばのような大規模な反政府デモが発生する可能性には注意が必要と思われます。