ホームマーケット日々のマーケットレポート【キーワード No.1,265】ラジャン総裁が進める中央銀行改革(インド)/マーケット情報・レポート - 三井住友DSアセットマネジメント

【キーワード No.1,265】ラジャン総裁が進める中央銀行改革(インド)

2014年2月10日

1.インドの中央銀行は?

 現行の制度では、インド準備銀行(中央銀行、RBI)の金融政策の目標は、物価の安定、経済成長の支援、金融市場の安定など多岐にわたり、ややあいまいな形になっています。また、政策は総裁が副総裁などの助言を参考に単独で決定していることから、判断の透明性が乏しいとの批判がありました。
 物価の上昇、景気の低迷、為替の大幅な変動といった近年の難しい情勢もあり、ラジャンRBI総裁は昨年9月に就任した際、諮問委員会を設けて金融政策の枠組みを見直す方針を示しました。

2.最近の動向

 諮問委員会は1月21日、インフレターゲット制度や金融政策委員会制度の導入などを含む改革案を総裁に提出しました。
 インフレターゲット制度は、政策目標を物価に絞って明確化しています。物価を単一の目標としても、持続的な経済成長や金融市場の安定も同時に図れるとの考えが示されています。指標としては、消費者物価指数の採用が提言されました。同指数はサービス価格も含むことなどから、これまで主に参考とされていた卸売物価指数などと比較して、家計に対する物価の影響やインフレ期待への影響を適切に判断できるとしています。目標水準は前年比+4%(目標レンジは±2%)とし、経過措置として1年後は同+8%、2年後は同+6%といった道筋も示されました。
 金融政策委員会に関しては、総裁を議長とした5名で構成する会合を2カ月に1度開催し、多数決で政策を決定することが提言されました。これまでの総裁単独の判断と比較して多角的な検討が可能となり、議事録などで決定の経緯も明らかになる見込みです。

3.今後の展開

 ラジャンRBI総裁は1月28日、物価上昇圧力への警戒から政策金利の引き上げを発表しました。また、政策決定にあたっては改革案も参考にし、1年後に消費者物価指数を前年比+8%に抑える場合に必要な手段として利上げを考慮したことも明らかにしました。
 改革案に盛り込まれたインフレターゲット制度や委員会制度は先進国の多くで実施されており、導入によりRBIの政策の透明性や投資家からの信認が増すとの見方が有力です。足元ではアルゼンチンペソやトルコリラなど多くの新興国通貨が急落しましたが、インドルピーの下落幅は比較的小幅にとどまっています。RBI改革に向けた取り組みへの期待は、ルピーを下支えする要因になっていると思われます。今後は改革案をめぐりRBIと政府の協議や国会での審議などが進むと見られ、新制度の導入に向けた進捗状況に注目です。