【キーワード No.1,252】総選挙を控え、インドの政治勢力図が流動化(インド)
2014年1月22日
1.インドの総選挙とは?
インド下院は今年5月に5年間の任期が満了となるため、総選挙が予定されています。前々回2004年、前回2009年の総選挙では、連続して国民会議派(INC)を中心とする統一進歩同盟(UPA)が第1勢力となり、約10年間政権を担ってきました。現在、与党勢力は議席数が過半数に満たないことから、他の政党と連携して政権を維持しています。最大の野党はインド人民党(BJP)で、その他には個別州に基盤を持つ地方政党なども議席を有しています。
2.最近の動向
昨年12月に行われた5つの州議会選挙では、INCが最大議席数を獲得できた州は、最も小さな州一つにとどまりました。景気低迷に加え、UPA政権の下で政治腐敗が進んでいるとの批判が強まっており、同党の人気は大きく低下している状況です。
一方、BJPは支持を広げ、先の5つのうち4つの州で最大議席数を獲得しました。ただし、デリー首都圏(州に相当)では、BJPが第1党になったものの過半数の議席を獲得できず、第2党になった庶民党(AAP)の指導者ケジリワル氏がINCの協力の下、州首相に就任しました。
同氏は政治腐敗の根絶を訴え、2012年にAAPを設立しました。同党が全国レベルでどの程度支持を拡大できるか未知数であり、既存政党間の争いに新たな不透明要因が加わった格好です。
3.今後の展開
シン首相は、2012年夏場にチダムバラム氏を財務相として起用して以降、経済・財政構造改革を積極的に進めてきましたが、与党連合の支持向上にはつながらず、今年に入り総選挙後の退任を表明しました。与党勢力が政権を維持した場合の後継首相には、INCの要職を務めるラフル・ガンジー氏が有力と見られています。世代交代や、政治的指導者を多く輩出してきたガンジー家からの起用が同党への支持回復につながるとの見方がある一方、同氏は政治経験が少なく指導力が未知数との不安も聞かれます。
一方、最大野党のBJPは、政権を獲得した場合の首相にグジャラート州首相のモディ氏を就任させることを決定しています。同氏は、インフラの整備や国内外企業の誘致などの経済政策の実績があり、国政でも中長期的な経済成長率を高める政策を推進することなどが期待されています。
ただし、足元では新しい政治勢力の台頭などによる票の分散から、全国規模の有力政党が単独過半数を獲得しにくいとの見方が出ています。政治勢力図の流動化が強まれば、総選挙後の政権安定が不透明にもなりかねないことから、インドの政治動向には今後も注目が必要と思われます。