ホームマーケット日々のマーケットレポート【キーワード No.1,244】選挙イヤーを迎え、揺れるトルコ「エルドアン政権」(トルコ)/マーケット情報・レポート - 三井住友DSアセットマネジメント

【キーワード No.1,244】選挙イヤーを迎え、揺れるトルコ「エルドアン政権」(トルコ)

2014年1月9日

1.エルドアン政権とは

 トルコでは、イスラム穏健派の公正発展党(AKP)が2002年11月の総選挙で議会の過半数を獲得して以降、2回の総選挙をはさんで単独政権を維持しています。エルドアン氏が2003年以降、党首・首相を務めており、元首のギュル大統領も議会でAKPから選出されています(次回以降は国民投票による直接選挙)。
 エルドアン政権はこれまで高い経済成長(2003年~2012年までの実質GDP成長率の平均は年+5.1%)を実現し、経済運営の手腕が国内外から高く評価されています。足元では特にインフラ整備などを通じた経済基盤の充実に力を入れており、日本も海底トンネルの建設や原発の建設計画などで協力しています。

2.最近の動向

 トルコでは、昨年12月中旬に複数の閣僚の親族を含む数十人が贈収賄の疑いで一斉に検挙されました。エルドアン首相は大規模な内閣改造を行い政権の刷新を図りましたが、辞任した閣僚の一人が首相も退陣すべきと発言したこともあり、AKPの政治腐敗への疑いや、首相の政権運営に対する不満が強まっています。また、検察や警察による今回の大規模な汚職摘発に対し、政府が報復と見られる人事異動を発表したほか、首相が政権転覆を目的とした行動と非難したことなども、政治的不透明感を強める要因になりました。
 報道などからは、検察や警察には有力なイスラム教組織「ギュレン運動」の支持者が多く、今回の混迷は同勢力と政府の対立が背景との見方が伝えられています。ギュレン氏の率いる同組織は、宗教活動のかたわら教育機関、マスメディアの運営なども行い、政治面では過去の総選挙でAKPを支持してきました。しかし最近は、エルドアン首相の政治手法や教育政策などを巡り、対立姿勢を強めている模様です。

3.今後の展開

 昨年6月には一時反政府デモが激化しましたが、直近の汚職疑惑を巡る政治的な混迷からはエルドアン政権への不満がかつての支持層からも強まっている状況です。ただし、これまでの経済運営への高い評価などからAKPへの支持は所得水準の低い地方圏を中心に依然高いと見られます。加えて、エルドアン首相は今週日本を訪問して各種インフラ投資への協力を取り付けるなど、経済基盤の整備を積極化しており、このような取り組みは同首相やAKPへの支持固めにつながると見られます。
 そのようななか、今年3月には地方選挙、8月には大統領選挙、来年には総選挙が予定されています。同首相は、初の国民投票による大統領選挙に出馬する意向が伝えられています。最大の都市イスタンブールでは野党共和人民党(CHP)への支持がAKPと拮抗しているとの報道もあり、トルコの今後の政治情勢に注目です。

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