ホームマーケット日々のマーケットレポート【キーワード No.1,243】不透明な情勢が続く「タイの政治」(アジア)/マーケット情報・レポート - 三井住友DSアセットマネジメント

【キーワード No.1,243】不透明な情勢が続く「タイの政治」(アジア)

2014年1月8日

1.タイの政治混乱のきっかけ

 タイでは、2013年11月1日に与党であるタイ貢献党が、国外逃亡中のタクシン元首相の帰国に向けた「恩赦法案」を下院で強行採決したことをきっかけに政治の混乱が続いています。野党である民主党を中心とした反政府勢力がバンコクで大規模なデモを開始したことから、上院は同法案を否決し、インラック首相は同法案の下院での再議決をしない方針を表明しました。同法案は事実上の廃案となったものの、反政府勢力は政権打倒とタクシン体制の根絶に目標を切り替え、デモは拡大しました。

2.最近の動向

 2013年12月9日、反政府デモの拡大を受けてインラック首相は下院の解散を発表しました。しかし、反政府デモを率いる民主党のステープ元副首相は、議会の解散がデモの目的ではないとし、デモを中止しないと表明しました。デモが収束しない背景には、与党(タクシン派)は地方の農村部で絶大な人気を誇るため、野党は選挙に勝てない見込みが強いことがあります。同元副首相は、与党は貧困層の票を買収していると主張するなど、反政府勢力は選挙の阻止を狙って抗議行動を続けています。
 選挙の日程は2014年2月2日と決定されました。しかし、デモ隊による妨害活動などにより、1月1日に締め切られた小選挙区の候補者登録は、複数の選挙区でゼロとなる異常事態となっています。下院の招集には定数(500)の95%(475)以上の議員が必要となっていますが、候補者登録がゼロの選挙区で選挙ができなければこの人数に達しないことが見込まれます。下院では首班指名が行われるため、下院の招集が不可能となれば首相を選出できない事態にもつながりかねません。

3.今後の展開

 反政府デモはバンコクの一部に限られており、製造業が集積する首都近郊の工業団地などに今のところ大きな影響は出ていません。ただし、政治の混乱の長期化は今後のタイ経済に影響を与えると見られます。同国の副首相は、2014年のタイ経済は従来の+4.0~5.0%の成長見込みに対し、政府のインフラ投資計画が延期を余儀なくされれば、+3.0~3.5%の成長にとどまるとの見方を示しました。選挙管理委員会は、2月2日の選挙後、妨害により候補者登録ができなかった地域のみを対象とした選挙を行う方針を示すなど、政治の混乱の影響を軽減しようとする動きも見られますが、反政府デモ隊は1月13日に大規模なデモを行うと宣言するなど、情勢は流動的です。今後の同国の政治情勢から目が離せない展開が続きそうです。

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