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米国の金融政策で注目されている『テーパリング』とは?

2021年1月29日

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米連邦準備制度理事会(FRB)は、新型コロナウイルスの影響から経済や金融市場をサポートするため大規模な金融緩和を行っています。景気対策とワクチンにより、年後半の景気回復が期待される状況となりつつありますが、経済が正常化に向かえば、金融政策については量的緩和の縮小から正常化が行われる見込みです。一般的に『テーパリング』と言われる量的緩和の縮小が、いつ、どのように実施されるのか、注目されています。

【ポイント1】量的金融緩和政策と『テーパリング』

■中央銀行は、景気後退期には政策金利を引き下げて景気や物価の下支えを行います。それでも景気が回復しない場合、非伝統的な手法である量的金融緩和政策を行います。国債や担保証券などを大量に買い入れることにより資金を供給し、債券市場の安定や長期金利の低下を促します。結果として、企業は資金調達がしやすくなり、設備投資などの経済活動が活発になることが期待されます。


■政府が打ち出す財政政策との相乗効果などで景気が上向くと判断されると、金融政策を正常に戻すべく中央銀行は出口戦略として量的緩和の縮小を実施します。英語のTaperingは「先細り、徐々に減らしていく」という意味ですので、量的緩和の縮小は『テーパリング』と呼ばれるようになっています。

【ポイント2】コロナショックによる世界的金融危機

■2020年に起こった新型コロナウイルスの拡大により、世界的な金融市場の混乱と経済の急速な悪化が発生しました。感染拡大の影響による経済危機は、リーマン・ショックなどの過去の経済危機とは異なり、大規模な経済対策の実施を迅速に決定することが出来ました。例えば米国はリーマン・ショック後よりも大規模な景気対策を実施しており、金融政策では多額の資産買い入れを行っています。

【今後の展開】『テーパリング』実施のタイミングとは

■ワクチンの普及による感染抑制や追加財政の効果によって景気の回復が期待され、経済指標に好転の兆しがみえれば、FRBが買い入れ資産の購入規模の縮小や購入停止についての議論を開始する可能性があると考えられます。1月26日と27日に行われた米連邦公開市場委員会(FOMC)では、現在の量的金融緩和は当面継続していくことが議論されました。『テーパリング』の時期についてはしばらく先になる可能性が高いとみられます。


■今後の経済の回復はワクチンの普及状況と財政政策の効果によるため、FRBの『テーパリング』の実施タイミングを推測することは大変困難です。また、前回2013年のように『テーパリング』開始の可能性に言及したことによる金融市場の混乱や経済の変調が起きる可能性もあるため、発表のタイミングやコメントの仕方は慎重になる必要があります。新型コロナウイルスの感染収束後の金融政策について、FRBと市場参加者の間で慎重な対話が必要になりそうです。

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