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今年、米国で上場が急増している『SPAC』って何?

2020年11月30日

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今年、米国では『SPAC』(Special Purpose Acquisition Company・特別買収目的会社)の上場が急増しています。『SPAC』を活用したIPO(新規株式公開)にも注目が集まっていますが、メリットが多い反面、問題もあるようです。10月13日には、ソフトバンクグループが『SPAC』を設立する計画と報じられ、日本においても新聞や経済誌などで『SPAC』の文字を見る機会が増えてきました。

【ポイント1】最近話題の『SPAC』とは?

■『SPAC』とは、自身では事業を営まず、未公開企業や他社の事業を買収することを目的とした会社です。『SPAC』を活用した上場の仕組みは、先ず、『SPAC』が上場、資金調達を行い、買収先を見つけると、その会社を買収し、事業を営む買収先が存続会社となって上場会社となります。通常、『SPAC』の上場時にはどの会社を買うのか不明なことから、ブランク・チェック・カンパニー(白紙の小切手会社)とも呼ばれます。

■『SPAC』活用のメリットとして、『SPAC』設立者は事業が簡素なため比較的簡単にIPOが行え、『SPAC』を活用する企業(被買収企業)は、機関投資家向け説明会などの手続きを省けるため、IPOに係る時間とコストを節約できます。また、個人投資家にとっては未公開株式への投資が身近なものとなります。一方、『SPAC』活用は安易な裏口上場との批判もあり、情報開示の徹底など課題もあります。

【ポイント2】『SPAC』を活用した上場は、玉石混交

■米宇宙旅行会社ヴァージン・ギャラクティックは、昨年10月に『SPAC』活用によりニューヨーク証券取引所に上場し、初日の終値は11.8ドルでしたが、足元では27.1ドルに達しています。

■一方、水素燃料電池トラックを製造する米新興企業ニコラ・モーターも、『SPAC』を活用し今年6月に米ナスダック市場に上場しました。株価(終値)は上場直後79.7ドルまで上昇しましたが、その後、不適切な情報開示が指摘されたことを契機に一時17.9ドルまで下落しました。

【今後の展開】課題が解決されれば、日本での『SPAC』解禁も

■米国では『SPAC』の上場が急増しており、今年は足元時点で200件が上場し、累計690億ドルの資金調達が行われたとの調査報告があります(2019年136億ドル)。『SPAC』のメリットが評価されている模様ですが、各国・地域の金融緩和政策による過剰流動性が『SPAC』上場の増加を牽引しているとも言われます。

■日本では2008年に『SPAC』の上場解禁が検討されましたが、課題が多く見送られています。但し、上場手法の多様性を求める声もあり、今後、情報開示や投資家保護などの課題を解決した上で、『SPAC』の上場が解禁されることも考えられます。

※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。

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