運用者の視点:中国の『ライブコマース』

2020年10月12日

<今日のキーワード>
「マーケット・キーワード」では、弊社のアジア株式運用者が運用業務を通して気付いたり、感じたことを“運用者の視点”として定期的にお届けしています。急速かつダイナミックに変革が進む、中国・アジア地域の経済やマーケットの“今”を、独自の視点でお伝えできれば幸いです。今回のテーマは、新型コロナウイルスの感染拡大により需要が急増し、急成長を遂げている中国の『ライブコマース』についてです。

【ポイント1】通販の新たな形である『ライブコマース』

■中国で『ライブコマース』が急成長しています。『ライブコマース』とはスマートフォン等のライブ配信機能を利用して商品やサービスを販売する仕組みで、一言でいえば「生中継のネット動画による実演販売」です。テレビショッピングと異なるのはその双方向性で、視聴者は動画を見ながら商品の質問をするとライブ主がその場で答えるなど、リアルタイムのコミュニケーションが可能です。また、Eコマースサイトとの連携で、その場で商品の購入と決済を済ませることができるなど、利便性の面でもテレビショッピングを上回ります。大手から中小まで多数の『ライブコマース』プラットフォームが乱立し、新型コロナウイルスの封じ込めに成功した今でも、拡大の勢いはおさまっていません。地方の農家が収穫した野菜や果物を『ライブコマース』で販売することも当たり前になっています。

【ポイント2】中国で『ライブコマース』が急成長した背景とは

■『ライブコマース』の爆発的な成長の背景には、新型コロナウイルスの感染が拡大し、企業などがオンラインでのマーケティングを強化したことがあります。加えて、消費者がよりコストパフォーマンスに優れた商品や個性的なブランドを求める傾向を強めていることや、商品の幅が広がってきたことがあります。また、イベント的な要素が盛り込まれ、例えば時間限定で使えるクーポンの配布や有力インフルエンサーの起用など、一種の娯楽として受け入れる消費者が増えてきたことも背景の1つです。商品を紹介する有力インフルエンサーは、普通の芸能人やスポーツ選手よりもはるかに有名人であり、一回のライブ配信販売で数十億円~数百億円の売上をたたき出すため、トップインフルエンサーともなると、ほとんど大スターの扱いです。

【今後の展開】中国政府も後押し、影響力の大きいインフルエンサー 

■政府サイドも、『ライブコマース』産業のサポートに積極的です。例えば、今年の3月には広東省広州市政府が、「『ライブコマース』発展行動案(2020~2022年)」を発表し、『ライブコマース』の産業集積地整備や有力インフルエンサー1万人の育成などを打ち出しています。また浙江省杭州市余杭区では、セールスとして強い影響力があるインフルエンサーは、高度人材分類5段階(A~E)の上から2番目のB類人材に認定され、マンションの販売などで購入権が優先配分されることになりました。A類はノーベル賞受賞者クラスの超高度人材ですので、それを除くと、インフルエンサーは一般の職種の中では最高の人材の扱いになります。日本では将来ユーチューバーになりたいという子供が増えていると聞きますが、中国では、『ライブコマース』のカリスマ販売員になりたいという子供が増えていくのかもしれません。

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