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運用者の視点:中国『新型コロナ対策から経済対策』へ

2020年4月13日

<今日のキーワード>
「マーケット・キーワード」では、弊社のアジア株式運用者が運用業務を通して気付いたり、感じたことを“運用者の視点”として定期的にお届けしています。急速かつダイナミックに変革が進む、中国・アジア地域の経済やマーケットの“今”を、独自の視点でお伝えできれば幸いです。今回のテーマは、中国の新型コロナ感染拡大の封じ込め策が如何なるものなのか、そして次の政策として経済対策へ軸足を移していることについてです。

【ポイント1】新型コロナ感染、沈静化に向かう中国

■世界各国で新型コロナウイルスの感染拡大が続く一方で、震源地の中国では世界に先駆けて感染が沈静化に向かっています。中国で確認される新規感染者の多くは海外からの帰国者で、国内での新規感染はかなり抑制された状態です。また、最近では海外への支援物資の提供や医療チームの派遣など、助けられる側ではなく助ける側としての行動や言動が増えており、とくに3月以降は、新型コロナウイルスを世界で最初に克服した国としてのアピールを強めている印象です。

【ポイント2】感染拡大抑制に対するテクノロジー活用の効果とは

■中国の感染封じ込め策が結果的に有効に機能した要因は、武漢市の徹底した封鎖(例:市外への道路に検問を設置)のように日本では実現出来ない次元の措置だけでなく、中国で発展してきたテクノロジーの活用が感染拡大の抑制に寄与した側面もありました。感染拡大の初期に登場した「感染発生地点アプリ」では、自分の居住地の近くのどこで感染者が発生したのかがピンポイントでわかるため、利用者はその地域を避けて行動することが出来ました。また、スマホ保有者の行動履歴がビッグデータとして管理されていることを活用した「濃厚接触診断アプリ」により、自分が感染者と接触したことがあるかどうか診断し、自分がいつどこで感染者と接触した可能性があるかが簡単に判断することが出来ました。

【今後の展開】中国の次なる政策は、経済対策へ

■感染の封じ込めが進むにつれて、感染対策と経済対策両にらみのスタンスから経済対策へと政策の軸足が移りつつあります。中国人民銀行(中央銀行)は3月13日に預金準備率の引下げを発表し、27日には中国共産党中央政治局会議で、財政出動を拡大する方針を決めています。財政拡大というと従来型インフラ投資(高速鉄道や高速道路、港湾など)が頭に浮かびますが、新型インフラとも呼ばれる5Gネットワークやデータセンター、新エネルギー車の充電設備などへの投資が前面に出る見込みです。また、従来型インフラ投資である鉄道投資も、長距離の高速鉄道ではなく、より生活に密着した近郊都市間の鉄道投資が重視されるようです。欧米や日本では感染拡大で活動停止となった企業の休業補償や所得補償などが経済対策の中心ですが、新型インフラに代表される次世代向けの投資を一気に進められるのは、トップダウンで戦略分野への投資をコントロールできる中国の特徴でもあります。

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