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『親子上場』の見直しは進むか?

2019年10月23日

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『親子上場』とは親会社と子会社が共に株式を上場していることを言います。日本で多くみられますが、親会社の利益が優先され子会社の少数株主の利益が損なわれるなどの懸念などが指摘されています。政府が、「成長戦略実行計画」を閣議決定し、その中で『親子上場』の問題を取り上げるなど議論は活発化しています。こうした流れを受けて『親子上場』の見直しが一段と進む可能性があり、今後の動向が注目されます。

【ポイント1】『親子上場』の見直しを促す動きが強まる

■『親子上場』を巡る議論が活発化しています。本年6月21日、政府は、「成長戦略実行計画」を閣議決定しました。この中で、『親子上場』の問題を取り上げ、上場子会社における独立社外取締役比率を高めること(3分の1以上や過半数)、独立性判断基準の見直し、情報開示・説明責任の強化などを掲げました。

■最近の事例では、オフィス用品通販大手のアスクルとその約45%の株を持つヤフーの対立があげられます。ヤフーがアスクルの一般株主を代表する立場の独立社外取締役の再任反対にまで踏み込み、7月30日に日本取引所グループ清田CEOが懸念を示すなど、『親子上場』の見直しを促す動きは強まっています。

【ポイント2】三菱ケミカルHDなど『親子上場』の見直しの動き

■『親子上場』の見直しなどにより企業再編を他社に先駆けて実施してきた企業に、20社以上あった上場子会社を4社まで削減した日立製作所や、パナソニックなどがあります。

■三菱ケミカルHDも同様に企業再編を積極的に進めてきた企業です。同社首脳から上場子会社の出資形態の見直しについて、前向きな発言が相次いでいます。同社は化学部門では経営統合が完了し、製薬部門では田辺三菱製薬が、三菱ウェルファーマと田辺製薬が合併して誕生後、2014年には大陽日酸を傘下に入れました。残るは同社と田辺三菱と大陽日酸との『親子上場』の見直しです。企業価値を高めるうえで望ましい形態について、競合相手や財務への影響など様々な観点から議論が進められていくとみられます。

【今後の展開】『親子上場』見直しが競争力強化につながることが期待される

■『親子上場』の見直しは、親会社による株式の100%買収による完全子会社化でも、子会社の他社への売却によっても、その際の子会社の価格は市場価格を上回る場合が多く、市場参加者の注目も高まっています。また、企業の間でも『親子上場』は経営資源の選択と集中が働かず、グループ全体での業績にはマイナスとの見方が高まりつつあります。『親子上場』見直しは日立など資本効率の改善に寄与した場合も多く、見直しが加速して企業の競争力強化につながることが期待されます。

※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。

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