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運用者の視点:アリババが『香港上場』を申請

2019年7月9日

<今日のキーワード>
「マーケット・キーワード」では、弊社のアジア株式運用者が運用業務を通して気付いたり、感じたことを“運用者の視点”として定期的にお届けしています。急速かつダイナミックに変革が進む、中国・アジア地域の経済やマーケットの“今”を、独自の視点でお伝えできれば幸いです。今回のテーマは、現在米国に上場している、中国のネット通販最大手のアリババ集団が『香港上場』を申請したことについてです。

【ポイント1】アリババは現在ニューヨーク証券取引所に上場

■アリババは中国企業でありながら、現在ニューヨーク証券取引所に上場しています。時価総額は日本円で約47兆円(2019年6月末時点、以下同じ)と、日本のトヨタ自動車(約22兆円)の2倍以上の超大型株で、かつ、今後も高い成長が期待できるとして、世界の有力投資家の多くが株主に名を連ねています。

■アリババの手元資金は潤沢で、別市場への上場によって資金調達を急ぐ理由はありません。にもかかわらず、香港への重複上場を申請しましたが、この背景には香港証券取引所の方針変更があります。

【ポイント2】香港取引所が種類株の発行を容認

■アリババがニューヨーク証券取引所に上場したのは2014年でした。当時、アリババは香港への上場も有力な選択肢として検討しましたが、経営陣が取締役を任命できる「パートナー制」などを巡って香港証券取引所と意見が合わず、『香港上場』を断念した経緯があります。その後、香港証券取引所は経営陣に普通株よりも強力な議決権を与える種類株の発行を容認しました。おそらくこれがアリババに『香港上場』を促した最大の理由と考えられます。

【今後の展開】『香港上場』で中国の個人投資家が投資可能に

■投資家は、アリババの香港への重複上場を基本的に歓迎しています。仮に米国が米国上場の中国企業に対して不利益な扱いをしたとしても、香港で上場していれば、その影響は緩和されるため既存の株主にとって決して悪い話ではありません。しかし、アリババの『香港上場』を誰よりも願っているのは、既存の株主よりも中国の個人投資家かもしれません。というのは、中国の個人投資家は米国上場株を自由に売買することが認められておらず、アリババという中国を代表する銘柄に投資したくても出来なかったからです。

■『香港上場』が実現すれば、ストックコネクト(上海・深センと香港市場の株式相互取引制度)を通じて、アリババに直接投資出来るようになります。『香港上場』自体はアリババの株主価値を上昇させるわけではありませんが、これにより中国の個人投資家からの資金が流入しそうです。

*個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。

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