経済再開と金融緩和が社債投資の追い風に

2021年5月17日

1.経済再開により先進国の成長率予想は上方修正

2.金融緩和継続の恩恵を受ける先進国社債

3.為替ヘッジコストは低水準

はじめに

世界各地で新型コロナウイルスの感染が続いていますが、欧米ではワクチン接種が進展しており、新規感染が抑制されています。徐々に経済活動が再開されつつありますが、中央銀行は回復に満足しておらず、大規模な金融緩和を現在でも続けています。また、中央銀行の金融緩和により海外の短期金利が抑制されていることから、為替ヘッジのコストは低水準にあります。今回はこうした要因がクレジット市場にどういった影響を与えているかについて分析し、今後のクレジット市場の動向を展望したいと思います。

1.経済再開により先進国の成長率予想は上方修正

■世界各地で依然として新型コロナウイルスの感染が続いています。直近では、インドや東南アジアなどの新興国が感染の中心になりつつあります。


■一方、米国や欧州ではワクチン接種が進展しており、新型コロナウイルスの新規感染が抑制されています。こうしたことから、経済再開の動きが急速に進んでいます。スマートフォンの位置情報から算出した移動指数は春先から回復を続けており、米国では感染拡大後の最高水準、欧州でも冬の第二波到来前の水準に到達しています。


■こうした経済再開の動きを受けて、国際通貨基金(IMF)は4月の世界経済見通しで先進国の成長率を上方修正しました。その後もワクチン接種が順調に進展にしていることから、7月に発表される次回の予想でも成長率の上方修正が続く可能性が高そうです。


■社債は企業による借金のため、経済再開に伴って景気が拡大し、借り手である企業の利益と手元資金が増大すると、流通価格が上昇する傾向があります。

2.金融緩和継続の恩恵を受ける先進国社債

■経済再開が進む中においても、緩和的な金融環境が続くことで、特に先進国の社債市場は安定した動きが続いています。


■先進国の社債価格は、2020年3月に新型コロナウイルスの世界的な感染拡大直後に大きく下落しました。しかしその後は、米連邦準備制度理事会(FRB)、欧州中央銀行(ECB)などの中央銀行が利下げと大規模な量的緩和、社債買入れプログラムを相次いで導入したことで急速に値を戻しました。


■経済再開が順調に進む中でも中央銀行の金融緩和は続いています。FRBのパウエル議長は4月の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、「緩和の段階的縮小の議論開始は時期尚早」、「経済は雇用とインフレの目標から程遠い」と述べ、景気の回復が続く中でも金融緩和の縮小に慎重な考えを示しました。


■ECBのラガルド総裁は3月の政策理事会で、国債買入れの増額方針を発表しています。また、4月の政策理事会後の記者会見でも、「短期的な経済見通しはなお不透明だ」と述べ、早期の金融緩和縮小をけん制しています。


■大規模な金融緩和を受け、米欧の中央銀行のバランスシートは拡大が続いています。弊社では、米国の量的緩和の縮小は2022年になってからと予想しており、目先は現在の大規模な金融緩和が続くと見ています。


■経済再開と中央銀行による金融政策の追い風を受け、先進国社債は今後も堅調な値動きを続けると見ています。


■足元で長期金利は上昇していますが、米国を中心とするインフレ上昇の加速は一時的と考えられ、主要中銀の金融緩和は継続されると見られます。長期金利の上昇は緩やかなものに止まると見られ、社債市場の動揺を招くことにはならないと想定しています。


■なお、2021年4月に示された国内主要生保の運用計画でも、各社からクレジット投資に前向きな姿勢が示されています。機関投資家は社債などのクレジット投資を積極化しており、こうした需給要因も社債市場が堅調になると見込む理由となっています。

3.為替ヘッジコストは低水準

■また、欧米の中央銀行の緩和的な金融政策を受け、為替のヘッジコストは低水準となっています。


■日本の投資家にとって、海外資産に投資した際の円高は主要なリスクのひとつとなっています。この為替変動リスクの大部分の抑制を目指す取引が為替ヘッジです。ただ、為替ヘッジには日本と海外の短期金利差や、通貨の需給要因などによりコストが発生します。


■日本では日銀による大規模な金融緩和が長期にわたって続いていたこともあり、海外と比べて短期金利が低く、金融緩和が日本ほど大規模でなかった海外通貨のヘッジコストが高い状況が続いていました。


■ただ、2020年3月以降は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて米国、欧州の中央銀行も大規模な金融緩和を行い、相次いで短期金利を引き下げました。その後も依然として金融緩和の縮小には消極的です。こうしたことから、為替ヘッジのコストは現在に至るまで低水準となっています。


■ユーロ円の3ヵ月の為替ヘッジコストはマイナスとなっており、日本の投資家は為替ヘッジを行うことでコストではなくプレミアムを享受できる状況です。


■ヘッジコストが低下すると、ヘッジコスト考慮後の外国債券の利回りは改善します。これまで、日本の投資家による海外投資の際には、為替ヘッジのコストの高さが課題になっていました。ヘッジコストの低下は日本人の外国債券投資の追い風になるものと思われます。


■財務省によると日本の信託銀行の対外債券投資は2020年後半から加速しています。利回りを求める日本人による外国債券投資は依然として積極的です。


■外国債券投資の中でも特に社債投資は、経済再開と中央銀行の金融緩和、為替ヘッジコストの低下による恩恵を今後も受けると見ています。

関連マーケットレポート