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2021年度に有望なアセットクラス点検

2021年3月23日

1.2020年度の金融市場は流動性相場で堅調推移

2.2021年度に有望なアセットクラス リスク選好も選別色の強まりを予想

3.ニューノーマル、2極化に続き注目されるキーワード

1.2020年度の金融市場は流動性相場で堅調推移

■2020年度の金融市場は、新型コロナ感染拡大の影響による相場変調を受けて始まりました。しかし、各国の大規模な金融緩和・経済政策などを受けて市場は回復に向かい、米大統領選を経て、「バイデン新政権による大規模な追加経済対策の実施やワクチン接種の普及によって経済活動が正常化、企業業績は回復する」というシナリオを織り込みつつ上昇しました。昨年3月末、昨年末から現在(3月19日)までの主な資産のリターンは右図のとおりです。


■世界の株式市場は上昇しました。コロナ・ショック後、株価は総じて回復傾向を辿り、未曽有の金融緩和による潤沢な流動性を背景に高値を更新する場面もみられました。米国株式市場は、S&P500種指数、NYダウ、ナスダック総合指数が史上最高値を更新しました。日経平均株価はおよそ30年半ぶりに3万円台を付け、新型コロナ感染拡大をいち早く抑制した中国でも、MSCIチャイナ指数が約27年ぶりの水準に上昇しました。インド株は、景気回復の早さが好感され、リスク選好で海外からの資金流入が続いたことなどから大きく上昇しました。


■債券市場では日米欧の量的緩和策が支援材料となり、10年国債利回りは総じて低水準で安定的に推移しました。社債も堅調でした。中央銀行が民間企業の資金繰りを積極的に支援したことが追い風となりました。米ハイ・イールド債は米連邦準備制度理事会(FRB)の信用緩和策を受けて堅調に推移しました。2021年に入ってからは、米財政支出拡大観測などから長期金利が大幅に上昇し軟調な展開となりました。


■リート市場は、新型コロナ感染抑制のための移動制限の影響からホテル、ショッピングセンターなどの回復が遅れ、株式市場に比べ出遅れ感があるものの上昇しました。

■為替市場ではリスク選好の動きから米ドル安が進みました。ユーロは復興基金の合意などを好感し次第にユーロ高傾向となりました。主要新興国通貨は2極化する展開となり、インドルピーなどが上昇する一方、ブラジルレアルなどは大きく下落しました。豪ドルは世界景気の回復期待や商品価格の回復などから上昇しました。しかし、2021年に入ると、米景気回復期待の高まりを受けて長期金利が上昇し、米ドル高、円安傾向となりました。

2.2021年度に有望なアセットクラス
リスク選好も、選別色の強まりを予想

■足元の株式市場は2021年の業績回復をかなり織り込んでいるとみられる他、長期金利が上昇してきていることから、当面は市場の不安定化が見込まれます。今後は名目金利、実質金利の上昇に注意を払いつつ、業績の回復が市場の重要なけん引役になると思われます。向こう1年程度の見通しは、引き続き株式が債券を上回るリターンをあげると予想します。


■米国では財政支出拡大による景気上振れの可能性が高く、長期金利が上昇するとみられますが、米連邦準備制度理事会(FRB)は緩やかな長期金利の上昇であれば許容する見込みです。歴史的にみれば実質金利は低水準にあり、引き続き利回りが重要な投資環境は続くと予想されます。リスク選好が継続する一方で、米長期金利のレンジが上方シフトしたため、投資対象については選別色が強まることが見込まれます。日欧など主要通貨国の株式などは米金利上昇に相応の抵抗力がありますが、新興国は経常収支などファンダメンタルズで選別されると予想します。


■世界的な金融緩和環境が続く中、ワクチンが普及し始め、世界経済の先行きは明るさが増しています。株式市場では、これまでは米国中心の期待形成でしたが、中国、アジア、日本の景気・企業業績の回復に対する期待度が高まっており、今年度はこれらの市場が堅調に推移すると期待されます。


■為替市場では、米ドルは、成長率の上振れにより、日米金利差の拡大などから対円で米ドル高傾向を辿るとみられます。ユーロは、ワクチンや財政政策で米国が先行する中、当面、対米ドルで一進一退の動きが見込まれますが、その後は市場のリスク許容度の改善や、EU復興基金・ワクチン普及による景気回復などから緩やかにレンジを切り上げると予想されます。

3.ニューノーマル、2極化に続き注目されるキーワード

■2020年度の金融市場では、新型コロナ感染拡大をきっかけに、ニューノーマル(新常態)や2極化、DX(デジタルトランスフォーメーション)、ESG(環境・社会・企業統治)投資など新たな動きがみられました。


■新型コロナ感染拡大がもたらす非接触化などの生活様式の変化やデジタル化の加速など、ニューノーマルへの適応度合いや業績動向の差を背景に2極化相場が展開されました。適応力の高いIT企業が多く上場する米ナスダック市場が大きく上昇し、世界の株式市場のけん引役となりました。また、環境・気候問題に対する関心が高まり、環境や社会に配慮するESG投資も急速に広がりました。


■景気回復に対する期待から、2極化の巻き戻しも進んでいますが、コロナ禍によってもたらされた時代の変化はもとに戻らないものもあると考えられ、今後もニューノーマルに適応するよう構造改革を進める動きが続くとみられます。


■そのような環境の下、注目されているのは環境関連、GX(グリーントランスフォーメーション、脱炭素に向けた取り組み)関連です。2021年度は二酸化炭素(CO2)排出規制など環境に配慮した規制の強化が世界的に進むとみられ、各国・地域や企業は対応を急いでいます。昨年、中国が2060年までにCO2排出量実質ゼロを目指し、非化石エネルギーの比率を上げるなどの気候変動問題への段階的な取り組みを発表したことも追い風です。脱炭素、水素や非化石燃料エネルギーなどの技術がより注目されるとみられます。


■DXも息の長いテーマとなっています。コロナ禍で急速に進んだデジタル化は、労働力不足によるニーズなどから今後も更に進展することが見込まれます。AIやIoTを利用したスマート農業や遠隔医療、物流など幅広い分野で活用されることが期待されます。


■また、テレワークやDXの拡大によって情報セキュリティの強化が必須となるため、ITインフラ関連やクラウドセキュリティのニーズが高まることが見込まれます。

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