今年はどうなる?コロナ禍で拡大した日本株の銘柄間格差

2021年1月14日

1.昨年は変動幅が大きい相場で、指数、銘柄間の上昇率格差は拡大

2.業績の安定感が強い内需型もコロナが直撃

3.グロース株は振れの大きい展開へ、バリュー株が上昇に転じれば、日本株は上昇継続

1.昨年は変動幅が大きい相場で、指数、銘柄間の上昇率格差は拡大

■昨年の株式市場は、新型コロナの影響を受け、市場の変動は極めて大きく、またスタイル、業種、銘柄間などの上昇率格差も著しく拡大し、コロナ禍の影響により明暗が分かれた1年となりました。ここでは昨年の状況を振り返るとともに、今後の見通しについてもみていきたいと思います。  

■昨年の日経平均株価は、1月20日には24,083.51円となり、24,000円を上回っていました。ところが、新型コロナの欧米などへの感染拡大を背景に世界的に景気減速が懸念され、3月19日には16,552.83円まで急落しました。その後各国の思い切った金融・財政政策や、コロナの感染拡大の一次的鎮静化に伴う景気の回復を受けて上昇に転じました。さらに11月には米国の政局不透明感の払拭、複数の製薬会社からワクチンの開発進展が報告されたことなどから急上昇しました。日経平均株価は89年のバブル崩壊後高値である2018年10月2日の24,270.62円を11月6日に上回り、その後27,444.17円で引けました。一方、東証株価指数(TOPIX)は2018年1月23日の高値1911.07ポイントを100ポイント以上下回る水準で終わりました。

■日経平均株価の年間の高値と安値の幅は11,015円と30年ぶりの大きさとなりました。年間上昇率は日経平均株価は16.01%上昇に対してTOPIXは4.84%にとどまりました。スタイル別の上昇率を示すTOPIXグロース指数は17.22%上昇、TOPIXバリュー指数は▲7.26%となりました。

■日経平均株価の騰落率をみると指数は16.01%上昇したにもかかわらず、上昇77銘柄、下落148銘柄となり、上昇銘柄の割合は34.2%にとどまりました。いかにグロース株(成長株)の集中物色であったかがうかがえます。

グロース株を集中物色

■日本株は2017年半ば以降、グロース株がバリュー株(割安株)を上回る展開が一貫して続いています。グロース株とは利益成長性を評価して、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)などでみて割高な株をいいます。予測困難な新型コロナの感染拡大により、クオリティ指向が高まり、グロース株の上昇が加速しました。一方、低迷したバリュー株を見ると、大型株の国際石油開発帝石はPBR0.26倍の低水準に放置されるなど、両スタイルの株価格差は一段と拡大しました。

■日経平均株価は採用銘柄の内、グロース色の強い値がさ株が大幅に上昇し、ファーストリテイリングなど構成比上位6銘柄の構成比は昨年末に年間で24.54%から32.92%に上昇、上位15銘柄では50%を上回る状況となりました。同指数は構成銘柄の平均値によって算出されるため、値がさ株の値動きに、影響を受けやすい傾向がありますが、その特異性が強まりました。日経平均株価はグロース色が強まった結果、昨年の上昇率は日経平均株価は16.01%で、TOPIXグロース指数は17.22%上昇と極めて近い上昇率となりました。

2.業績の安定感が強い内需型もコロナが直撃

■コロナ以前の景気後退や金融不安では、外需、景気敏感、金融関連などが深刻な打撃を受けましたが、今回は、外部環境の影響が比較的小さく、本来は業績の安定性が高い内需関連業種への影響が大きい点に特徴があります。

■上昇したのはグロース色の強い業種です。5G向けの需要拡大や巣ごもりによる通信量の増加などから電気機器、情報・通信業や、任天堂が含まれるその他製品などが上昇しました。景気敏感業種でも、中国の景気回復の好影響を受けそうな機械、業界再編が進んだ海運業などは上昇しました。一方、世界的な景気悪化を懸念して、市況関連や景気敏感業種の鉱業、石油石炭製品、ゴム製品、鉄鋼などが下落しました。大規模な行動制限などにより、コロナ拡大の直撃を受けた空運業も下落上位となりました。コロナの影響が大きい小売業は8.36%の上昇となりました。百貨店などは大幅下落しましたが、ドラッグストアなどは上昇し明暗を分けました。

個別銘柄の上昇率格差は拡大、グロース銘柄が上昇

■日経平均株価採用の銘柄で昨年の動きをみると、日経平均株価の平均PBR1.21倍を大きく上回るグロース色の強い銘柄が上位に並び、バリュー色の強い銘柄が下位となっています。

■医薬品情報サイトのエムスリーの株価は194.80%上昇となり、時価総額は6兆円を上回りました。PERは220.4倍で、PBRは37.72倍、200日移動乖離率も69.15%でグロース株優位の昨年相場を代表する銘柄となりました。その他、ネクソン、サイバーエージェントなどネット関連が上位となりました。多くのハイテク企業を投資先として持つソフトバンクグループや5G投資拡大や、通信量拡大でメリットを受ける半導体製造装置、電子部品銘柄などが上位となりました。これら銘柄には総じてバリュエーション、テクニカル面などからは過熱感があります。

■一方下落上位銘柄は三井E&Sホールディングス、国際石油開発帝石、日揮ホールディングスなど資源価格の影響を受ける銘柄やJ.フロント リテイリング、コニカミノルタ、リコー、西日本旅客鉄道(▲42.81%)などコロナによる外出自粛や在宅勤務拡大の影響を受けた銘柄となりました。

3.グロース株は振れの大きい展開へ、バリュー株が上昇に転じれば、日本株は上昇継続

■昨年末時点でネット裁定残高は▲3.61億株と売り残超過が続いています。これにより先物などショートポジションが高水準で上昇余地があることがわかります。一方、日経平均株価の昨年末現在の200日移動平均乖離率が、21.28%となっており、強い買われすぎを示唆しており、テクニカル面からは警戒が必要な状況にあります。また昨年までのグロース株物色により、グロース株のウエイトが非常に高くなり、グロース株の変動によって市場が大きく変動するリスクが高まっています。日経平均株価が、12月29日に714.12円上昇したように著しく構成比の高まったグロース色の強い値がさ株の変動により、一方向に振れやすい状況が続くとみられます。

■グロース株はネット系など、バリュエーション、テクニカル面などから過熱感があります。グロース株の評価は難しく、市場参加者のセンチメントに左右されるところがあります。調整となった場合は下値めどが見通しがたい面があります。過去の例をみても一極集中の後は調整が深くなりがちです。

■バリュー銘柄はPBRなどからみるとリーマンショック以上に売られている銘柄もあります。バリュー株に物色が循環するかはワクチン効果による新型コロナに対する懸念が低下することや米国、中国などの景気回復次第です。そうした兆しが出ればバリュエーションの修正余地は大きいと思われます。今年株価が安定して上昇するには、物色が循環してTOPIXやバリュー株などが上昇することが必要とみられます。

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