ホームマーケット身近なデータで見た経済動向1月のトピック「「GO TO一時停止」などから足元、景気はもたつき。新型コロナ感染拡大の影響が懸念材料。但し、循環的にみて景気には底堅い面が。ワクチン接種などでコロナが終息に向かうことを期待。 “2月3日でない節分”のジンクスからみても、景気は底堅い」

1月のトピック「「GO TO一時停止」などから足元、景気はもたつき。新型コロナ感染拡大の影響が懸念材料。但し、循環的にみて景気には底堅い面が。ワクチン接種などでコロナが終息に向かうことを期待。 “2月3日でない節分”のジンクスからみても、景気は底堅い」

2021年1月4日

(新型コロナに翻弄された2020年の「景気ウォッチャー調査」。11月「新型コロナ」の先行き警戒感強まる)

2020年は新型コロナウイルスに翻弄された1年であった。大晦日の東京都の新たな感染者数は1,337人で初の1,000人超え、全国の新規感染者は4,519人と過去最多になった。

「景気ウォッチャー調査」に2020年1月調査で初めて「新型コロナウイルス」という言葉が登場し、それ以降、新型コロナウイルスの感染拡大の影響が景況感に大きな悪材料となっている。緊急事態宣言が発令された4月に各判断DIが統計開始以来の最低を記録した。飲食関連の現状水準判断DI(季節調整値)は▲3.1だった。マイナスという数字はこの統計史上初めてだ。高めに出やすい月なのに原数値が1.2と低かったため、季節指数4.3を引くとマイナスになった。季節調整値とは言え全員が「悪い」と答えたことを意味する0.0を下回る、極めて厳しい数字だった。

4月の現状判断DIは7.9。その後は持ち直し、10月には「GO TO キャンペーン」の効果もあって54.5と景気判断の分岐点である50を一時的だが上回った。また新型コロナウイルスに関するコメントをした景気ウォッチャーの回答だけを使い、「新型コロナウイルス」関連の現状判断DIを独自に作成すると「新型コロナウイルス」関連現状判断DIは全体のDIを下回り、足を引っ張る要因であることがわかる(図表1)。多い月には2,050人(有効回答者は約9割の1,800人台)の景気ウォッチャーの過半数が景況判断の根拠として「新型コロナウイルス」に関してコメントした。

直近のデータである11月の景気ウォッチャー調査では、現状判断DIは、前月差8.9ポイント低下の45.6となった。「新型コロナウイルス」関連現状判断DIは前月差12.9ポイントと2ケタ低下し39.3になった。但し、現状水準判断では、11月も企業動向関連DIは改善した。足元の輸出・生産の底堅さが反映されているとみられる。

11月の先行き判断DIは、前月差12.6ポイント低下し36.5になった。「新型コロナウイルス」関連先行き判断DIは前月差14.3ポイント低下し33.2へと大幅に低下した。先行きについて感染症の動向に対する懸念が強まっている。

(年末の風物詩にも新型コロナの影響色濃く。2020年の「今年の漢字」は「密」。新語・流行語大賞「3密」)

「今年の漢字」はそのときどきの景気局面や経済状況を映す。景気が良く明るいムードが社会に満ちているときは、前向きな意味の漢字が選ばれる傾向にある。2019年末の段階では、何事もなければ、2020年は東京オリンピックの年なので、今年の漢字は「金」の可能性が高いと思われた。調査期間直前の新潟中越地震や史上最多の台風10個上陸で「災」となった2004年や、リーマンショックの2008年の「変」のようなショッキングな出来事がない場合、2000年、12年、16年と夏季オリンピック開催年の漢字は「金」になっている。五輪の「金」メダルが注目されるようだ。しかし、東京オリンピックは2021年に延期になり、2020年の今年の漢字は新型コロナウイルス関連から選ばれ、「密」となった(図表2)。「密」はコロナ関連の漢字の中でも、予防策として語られることが多く、コロナ禍の「禍」や疫病の「疫」や「病」、感染の「染」などと比べ、「親密」などの使われ方からみて、どちらかと言えば暖かく前向きな感じがする面がある。幸い2020年は台風上陸や大きな地震発生がなかったので、コロナ関連としても「災」が選ばれることはなかった。鬼滅の刃に絡めて、コロナウイルス絶滅を期待した「滅」は7位にとどまり、人々は「密」を選んだ。

また、新語・流行語大賞は「3密」とコロナ関連だった。ノミネートされた30語の半分がコロナ関連だった。

(21年各四半期は実質GDP前期比年率+1~2%台で推移が平均的予測、新型コロナが最大のリスク)

20年7~9月期実質GDP成長率・第2次速報値は前期比年率+22.9%と、新型コロナウイルスの感染拡大により経済活動が停滞した4~6月期からの反動増で、4四半期ぶりの増加に転じた。オールジャパンのエコノミストのコンセンサス調査である「ESPフォーキャスト調査」(12月調査)によると、20年10~12月期は前期比年率+3.4%で、その後21年1~3月期から22年1~3月期は前期比年率+1~2%台の増加で推移するというのが平均的な見方である。

新型コロナウイルスの感染増加への対応で、11月後半から経済活動を自粛する動きが見られた。さらに、政府の観光支援策「Go To トラベル キャンペーン」が12月28日から1月11日にかけて全国一斉に一時停止となった。年末年始の医療体制への負荷を減らすなどの目的があろう。このため21年1~3月期の実質GDPの前期比年率は平均予測より下振れる可能性も出てきた。「ESPフォーキャスト調査」でも低位8人の予測平均は▲0.6%で一時的にマイナス成長になってもおかしくない状況だ。

「ESPフォーキャスト調査」(11月の特別調査)で景気のリスクとして第2位の「米国景気の悪化」を大きく引き離し、ほとんどのフォーキャスターが指摘したのが「新型コロナウイルスの感染状況」だった(図表3)。

(足元の鉱工業生産指数のもたつきで景気動向指数による景気基調判断上方修正は3月上旬に先送りか)

鉱工業生産指数・11月分速報値・前月比は0.0%と、6カ月連続上昇にならず、横ばいになった。季節調整値の水準は95.2で、20年3月の95.8にまだ届かない。自動車工業は部品不足などから6か月ぶりに低下したが、半導体製造装置などが寄与した生産用機械工業など15業種中9業種が前月比上昇となった。経済産業省の生産指数・基調判断は「生産は持ち直している」で据え置きとなった。12月分の生産指数は第3波の新型コロナウイルス感染拡大の影響もあって、もたつきそうだ。12月分生産予測指数・前月比は▲1.1%下降。経産省試算値は▲2.3%の下降である。但し、1月分生産予測指数・前月比は+7.1%の上昇と高めの伸びが見込まれている(図表4)。

11月・12月の生産指数のもたつきは一時的なものになる可能性が大きいとみるが、期待された景気動向指数の景気判断の「下げ止まり」から抜け出し「上方への局面変化」に上方修正されるのは、景気動向指数1月分が発表される3月上旬になる可能性が大きいと思われる。

(12月調査・日銀短観で企業の、雇用・設備・在庫の過剰感が高まっていない点は、循環面の明るい材料)

日銀短観12月調査の大企業・製造業・業況判断DIが▲10と前回9月調査の▲27から17ポイント改善したことに代表されるように、足元で輸出が持ち直し、生産の増加基調が継続しているという経済活動回復の効果が出ている点がまず挙げられる。

12月短観によると、2020年度の全規模・全産業の設備投資計画・前年度比は▲3.9%の減少と9月調査の▲2.7%から下方修正された。しかし、生産・営業用設備判断DI(「過剰」マイナス「不足」)をみると、設備の過剰感が増している気配はない。設備投資計画の下方修正は、設備の過剰感から来ているものではなく、新型コロナウイルスの感染拡大懸念によるものであることがわかる。

失業率などの統計では、雇用面は厳しい状況にあるが、雇用人員判断DI(「過剰」マイナス「不足」)をみると現状も先行きも雇用に関して過剰感が増しているという状況にはないことがわかる(図表5)。さらに製造業の製商品在庫水準判断DIと製商品流通在庫水準DI(「過剰」マイナス「不足」)でも同様なことが言える。企業の、雇用・設備・在庫の過剰感が高まっていない点は、景気循環面からみて明るい材料だ。

(日本レコード大賞も「鬼滅ブーム」を反映。第3次産業活動指数「映画館」19年10月以来の指数水準)

LiSAの「炎」が第62回日本レコード大賞を受賞した。「『鬼滅の刃』無限列車編」の主題歌である。今回のレコード大賞では『鬼滅の刃』が「特別賞」も受賞した。「鬼滅ブーム」だった年を象徴する2020年の締めくくりになった。

12月4日に発売された最終巻の23巻の初版発行部数が395万部で、シリーズ累計発行部数(電子版を含む)は1億2,000万部突破となった。『鬼滅の刃』を原作としたアニメの第一部の続編にあたる、映画「『鬼滅の刃』無限列車編」が10月16日の劇場公開から10日間での興行収入は107.5億円となった。公開10日間での100億円突破は、史上最速記録だ。12月13日には、公開9週で302.8億円と最速で300億円突破した。歴代最高の「千と千尋の神隠し」が300億円を超えるには37週かかったことに比べて異例の速さだ。12月27日には324.7億円となり、「千と千尋の神隠し」の316.8億円を上回り歴代最高収入となった。新型コロナ感染防止対策に気を配り、観客の不安解消にあたった映画館の関係者の努力も大きいだろう。ハリウッド映画が不在のなか、スクリーン数と上映回数を最大限まで引き上げた戦略も奏功した。

新型コロナウイルスの影響で第3次産業活動指数の映画館(ウエイト1万分の2.4)の前年同月比は5月に▲98.7%減まで落ち込み、8月分▲65.2%、9月分▲44.9%と2ケタの大幅減少が続いた。しかし『鬼滅の刃』が10月16日に公開されたことで映画館は息を吹き返し、10月分は▲8.4%と1ケタの減少率まで改善した。2015年を100とした10月分の季節調整値は105.1で、2019年10月の113.7以来の水準に戻した(図表6)。音楽・芸術等興行の10月分の季節調整値26.4の低水準、前年同月比が▲77.0%と依然大幅減少であることと対照的だ。

(JRA売得金9年連続増加は景気面での明るい動き。ジャパンカップ売得金前年比+47.5%の大幅増)

JRA(日本中央競馬会)の2020年の売得金・年初からの累計金額の前年比は新型コロナウイルスの影響で2月29日から(10月4日まで)無観客レースになったことから、5月3日の週までの累計では▲6.2%まで悪化した。しかし、コロナ禍の対応としてネットでの馬券販売で持ち直した。結果的に2020年は前年比+3.5%と9年連続の増加になった(図表7)。

話題のG1レースも売り上げ増加に寄与した。10月25日に行われた菊花賞では一番人気のコントレイルが見事に勝利し、父ディープインパクト以来となる無敗の3冠馬に輝いた。菊花賞の売得金の前年比は+30.4%と2ケタの増加になった。そのコントレイルに、市場初の無敗牝馬3冠を達成したデアリングダクト、そして史上初の芝G18冠を達成したアーモンドアイが揃って参加し、アーモンドアイが優勝し9冠となったファン注目の11月29日ジャパンカップでの売得金は前年比+47.5%の増加とさらに伸びた。

(財政金融政策の下支え続く。50を大幅に上回る推移が見込まれるESP調査の「総合景気判断DI」)

現在、物価が安定している点も大きい。短期的な物価下落なら、実質賃金の増加要因になる。11月の実質賃金は9カ月ぶりに前年同月比プラスになりそうだ(図表8)。GO TOキャンペーンによる宿泊費下落、携帯電話料金の引下げを政府が主導していることもあって、物価が上昇しそうな局面ではない。日銀は金融政策を緩和状態にしておきやすく、企業の資金繰りを支援しやすい状況だ。

財政面では大型の対策が取られている。政府は12月8日に事業規模73.6兆円の追加経済対策を決めた。追加対策は、①新型コロナ感染症対策:6兆円、②コロナ後を見据えた経済構造の転換:51.7兆円、③ 防災・減災と国土強靱化:5.9兆円の3本柱に、新型コロナウイルス感染症対策予備費の適時適切な執行、で構成されている。

英国や米国では新型コロナのワクチンの接種が始まった。日本で幅広くワクチン接種が行われるには、もうしばらく時間がかかるだろうが、2021年中には新型コロナの治療薬の開発と合わせ、コロナ感染終息に向けた流れができるものと期待される。

「ESPフォーキャスト調査」(12月調査)での2021年度実質GDP見通し・平均値は、+3.4%の増加(高位8人平均+4.1%、低位8人平均+2.8%)となった。2020年度実質GDP見通し平均値は▲5.4%である。2020年度のマイナス成長から2021年度はプラス成長に持ち直すという見通しがエコノミストのコンセンサス予測だ。

ESPフォーキャスター全員の総意を示す「総合景気判断DI」を見ると、2020年10~12月期は景気判断の分岐点にあたる50を大幅に上回る90.0。その後2022年7~9月期までは70~80台で、50を大幅に上回って推移する。「総合景気判断DI」が一時的に低めになるのは、2021年1~3月期と夏季オリンピック終了直後の2021年10~12月期だが、どちらも72.9で50をかなり、上回っている(図表9)。多少の振幅があるものの、おそらく2020年5月を谷とする緩やかな景気回復が続くというのがエコノミストのコンセンサスとなっている。

(“通常の2月3日でない節分”は後退局面ではないというジンクスが124年ぶり2月2日節分で生きるか)

「節分」は通常、2月3日だが、2月2日や2月4日になる年もある。1985年から2020年までは「節分」は2月3日で動かなかったが、2021年は1897年(明治30年)以来124年ぶりに2月2日となる。立春が変動するので、立春の前日として決まる節分も変動する。1太陽年である 365.2422日と1年 365日の差により、6時間弱ずつ遅くなる一方、400年に97回ある閏年では366日になるので4年前より少し早くなる。西暦年が100で割り切れる年は400で割り切れる年を除き平年なので、例えば、1900年、2100年は平年になる。このため、節分は2月2日から2月4日の中に納まる。

2月2日が節分になるのは、1889年(明治22年)以降、1900年までは1893年(明治26年)と合わせ4年に1度3回だけであった。一方、一番最近、節分が2月4日となったのは1984年(昭和59年)、「立春」が2月5日だった。1956年(昭和31年)から1984年までは4年に1度のペースで節分が2月3日ではなく2月4日に移動となった。なお、1900年から1952年(昭和27年)の間は2月4日が節分になるのが4年に2度あるいは3度あるのが当たり前の期間であった。1952年の前年の1951年も2月4日が節分だ。なお、2057年から2100年の間は2月2日が節分になるのが4年に2度あるいは3度が当たり前の期間になる。

日本最初の資本主義的な恐慌は「明治23年恐慌」であるといわれる。元関西学院大学経済学部長の故・田村市郎氏によれば、明治25年11月を谷とする戦前の最初の景気循環局面で1893年(明治26年)と1897年(明治30)年の節分は、日清戦争好況を含む拡張局面だった(図表10)。また、1956年(昭和31年)から1984年(昭和59年)まで4年に1度のペースで生じた2月4日の節分が景気後退局面になったことは一度もない(図表11)。次に、4年に1度のペースで節分が2月3日でなくなるのは2025年。大阪万博開催という景気にとって明るい材料がある年の節分は2月2日だ。“通常の2月3日でない節分”は後退局面にならないというジンクスが124年ぶりの2月2日節分で生きて、2021年が景気拡張局面になることを期待する。新型コロナウイルスという鬼は、「鬼は外!」だ。